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鉄損とは?ヒステリシス損と渦電流損について分かりやすく解説

変圧器や電動機といった機器のエネルギー損失は鉄損と銅損の2種類があります。ここでは鉄損の概要と発生原理を磁化曲線(ヒステリシスループ)を用いて分かりやすく説明します。

目次

変圧器や電動機の損失の分類

変圧器と電動機の共通点は電気エネルギーを磁気エネルギーに、または反対に磁気エネルギーを電気エネルギーに変換して運転する機器であることです。

変圧器はこれにより電圧を降圧、または昇圧していますし、電動機は回転します。

このような機器の損失は大きくいうと鉄損と銅損に分けることができます。そして更に細かく分けると、図1のように分類されます。

変圧器の損失の分類
図1 損失の分類

このうち銅損は導線に電流が流れた時、導線の抵抗によって生じるジュール熱です。これはわかりやすいと思います。

しかし鉄損はなんなのでしょうか?次の項から鉄損について解説します。

鉄損について

前述しましたが変圧器や電動機は電気から磁気に、もしくは電気から磁気にエネルギーを変換して運転する機器です。この変換をする際には磁束が生じています。この磁束の変化によって生じる損失を鉄損といいます。

鉄損はヒステリシス損渦電流損に分かれます。

ヒステリシス損

ヒステリシス損とは鉄心を磁化する際に発生する損失のことです。変圧器の図を使って詳しく解説していきます。

図2のような変圧器があります。鉄心の1周の長さはLで、1次巻線の巻数はN回です。

この1次巻線に電流Iを流すと鉄心の内部には磁界Hが生じます。

変圧器の構成
図2 変圧器

ここでさきほど出てきた磁化とはなにかを解説します。

まず鉄心の内部には非常に小さな磁石がたくさんあると考えることができます。

それを表したのが図3です。この小さな磁石を分子磁石と呼びます。

鉄心中の分子磁石
図3 鉄心中の分子磁石

1次巻線に電流Iを流すと、磁界Hが鉄心に発生します。分子磁石は図4のように磁界Hによる磁力で向きが変わります。

これを磁化と言います。

磁化の仕組み
図4 磁化のイメージ

そして磁界Hを大きくするほど、分子磁石の向きは揃っていきます

また分子磁石の向きが揃うほど、鉄心内部の磁束密度Bが大きくなります

この関係を表したものが図5のグラフです。これを磁化曲線といいます。

磁化曲線
図5 磁化曲線

ここで注目したいのは磁界Hを大きくし続けると、途中で磁束密度があまり大きくならなくなっている点です。これは分子磁石の向きが全て揃ったためです。

この磁界を強くしても、磁束密度が大きくならなくなることを磁気飽和といいます。

次に1次巻線に流す電流の向きを逆にします。すると磁界Hの向きも逆になります。そのため鉄心中の分子磁石の向きは図6のように逆の向きに揃っていきます。

分子磁石の向きの逆転
図6 分子磁石の向きの逆転

逆に揃っていく過程をさきほどの磁化曲線に描いたのが図7ですが、元の磁化曲線には重なりません

磁化曲線
図7 磁界の向きを逆にしたときの磁化曲線

図8で磁界を0にした時、つまり巻線の電流を0にした時を見てみましょう。

この時磁束密度Bは0になっていません。これは分子磁石の向きが完全に元に戻らないからです。

この時の磁束密度の大きさを残留磁束密度といいます。

残留磁束密度
図8 残留磁束密度

残留磁束密度が大きいということは、外から磁界をかけられても鉄心内部の磁力が変わりにくいことを示します。つまり強い磁力を維持し続けることができるということです。

そのまま曲線を追っていって、次は図9で磁束密度が0になる点を見てみましょう。この時の磁界の強さを保磁力といいます。

保磁力
図9 保磁力

保磁力が大きいと磁力を0にするために強い磁界を掛ける必要があります。

そして磁束密度が大きくならなくなった点からまた再度、逆方向の磁界をかけます。

すると図10のような曲線を描き、また磁束密度が+方向に大きくなっていきます。これも、磁界を-方向にかけた時と同じように、元の磁化曲線とは重なりません。

図10の赤で描いた曲線をヒステリシスループといいます。

ヒステリシスループ
図10 ヒステリシスループ

そしてこのヒステリシスループの面積が大きくなるほど、ヒステリシス損が大きくなります。

これから分かるのは、ヒステリシス損とは鉄心を磁化する際に使われるエネルギーであるということです。

ヒステリシス損が何か分かれば、どのような鉄心が変圧器に向いているかが分かります。

どのような鉄心が向いているかというと、保磁力が小さい鉄心です。

変圧器の二次側に交流電圧を出力するには、鉄心中の磁束の向きを周期的に逆転させる必要があります。保磁力が大きいと、磁束の向きを逆転するため1次側に大きな電流を流さなければいけません。

損失がふえてしまうので、保磁力が小さな鉄心が変圧器に向いています。

渦電流損

渦電流損とは鉄心に流れる渦電流によって、鉄心にジュール熱が発生し生じる損失です。

まず渦電流とはなにか?について考えます。

変圧器の1次巻線には交流電圧をかけると電圧の大きさと向きは周期的に変化するので、1次巻線に流れる電流の大きさや向きもこれに合わせて変化します。

すると鉄心中の磁束の大きさと向きも同様に変化します。

電磁誘導の法則により、2次巻線には磁束の変化を妨げる方向に起電力が発生しますが、実は図11のように巻線だけではなく鉄心にも、磁束の変化を妨げる方向に起電力が生じます。

鉄心中の渦電流
図11 鉄心中に生じる起電力

磁界の向きを妨げる方向というのは、例えば1次巻線に流れる電流による磁束が減少していくときは、磁束を増やす方向に、増えるときは増やす方向にということです。

鉄心中にはこの起電力の向きと同じ方向に電流が流れます。これが渦電流です。

そして渦電流によって鉄心に生じる熱損失を渦電流損といいます。

では渦電流を小さくするためにはどうすればいいでしょうか?

渦電流損を小さくするためには、図12のように薄い鉄板の表面を絶縁し、これを重ね合わせて鉄心をつくります。これを積層鉄心といいます。

積層鉄心
図12 積層鉄心

渦電流は鉄心に垂直に流れますが、図12のような積層鉄心を使うことで、渦電流が流れる経路が減ります。

すると渦電流が流れにくくなり、損失も小さくなります。

おわりに

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