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交流の電力は電圧×電流では求められない理由

(前ページと関連することなので、まだ読んでいない方は↓のページから読んでもらった方が理解しやすいです。)

電力を求める式は電圧×電流と中学時代の授業で習ったと思います。しかしこれは直流の場合だけで、交流の場合はこれだけでは求められません。

この理由は交流に位相の概念があるからです。これについて解説をします。

目次

直流の電力計算

直流の電力は「電圧×電流」だけで求められます。この理由は、直流に位相の概念が無いからです。

これを図で考えてみましょう。図1は直流の電圧と電流の波形です。
縦軸は大きさ、横軸は時間を表します。

図1 直流の電力計算

図1のある時間、これをt1秒とします。
t1秒の瞬間のときの電圧と電流を掛けた値は、100×10=1000です。

では電流の位相をずらして同じように計算してみましょう。といっても直流には位相の概念はありません。ですがここでは説明のため仮に位相があったとしたらどうなるかを考えてみます。

では図2で説明します。
図2に描いてあるように、電流の位相を少しずらして、さっきと同じようにt1秒での瞬間の電圧×電流を求めてみます。

図2 直流の電力計算(位相がずれたら)

当然ですが計算結果は変わりません。直流では値が変化しないので、位相をずらしても何も変わりません。
そのため位相を考えなくても良いし、電力も単純に電圧×電流で求めることができます。

交流の電力計算

では交流ではどうでしょうか?

図3は電圧100V、電流10Aの交流波形を描いたものです。さっきと同じように、t1秒での電圧×電流を求めてみます。
t1秒での電圧はおおよそ〇〇V、電流は〇〇Aですので、
電圧×電流は〇〇×〇〇=〇〇となります。

図3 交流の電力計算

では位相がずれるとどうなるでしょう?
直流のときと同じように電流の位相をずらして、t1秒での電圧×電流を求めてみます。

図4 交流の電力計算

図4をみると分かるように、位相がずれていない時に比べて、位相がずれると計算結果が小さくなります。

位相がずれているか、いないかによって計算結果が変わります。
細かいことはひとまず置いておいて、このことから交流の電力を求めるときは位相のことを考えないとダメということが分かると思います。

交流の電力計算は力率を考慮する

ではどうすれば位相を考慮して電力を計算できるかというと、電圧×電流にさらに力率をかけると計算ができます。
式にすると「交流電力=電圧×電流×力率」です。

力率は電験を勉強するにあたってよく出てくるので、ざっくりとどういうものかをここで知っておくと良いです。

力率は位相のずれ具合を示す値です。位相のずれが無いときには力率は1になります。

つまり位相のずれが無いときの交流電力は、
電圧×電流×力率=電圧×電流×1=電圧×電流となり、位相のずれの影響を無視できます。

力率は電圧と電流の位相のずれの大きさから求めますが、これについては交流回路の解説をする際に併せて解説をします。

正確な解説は交流回路の項で解説をするとして、
ここでは交流の電力計算は、位相を考慮する必要があることを理解し、その理由をイメージできるようになってほしいと思います。

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