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インバータとPWM制御とキャリア周波数について解説

こちらの記事でインバータの構造や仕組みを解説しました。そこではインバータは直流電圧を交流電圧に変換して、図1のような波形を出力していると書きました。

インバータから出力される電圧の簡略波形
図1 インバータから出力される電圧波形(簡単にしたもの)

ただ実はこれは分かりやすいようにとても簡略した波形です。

実際のインバータの出力はこの角々した波形(矩形波といいます)とは違います。これはきちんと理由があってのことです。

そこでインバータから実際に出力される波形はどんなものなのか?

そしてこれを説明するのにPWM制御とキャリア周波数もキーワードになってきますので、これらを解説していきます。

目次

インバータから出力したい波形

交流電圧はそもそもどこからくるというと、発電所などからです。

発電所では発電機で電気を作り各場所へ送っていますが、発電機でつくられる電圧の波形は図2のようになめらかなカーブを描いています。この波形は正弦波ともいいます。

正弦波
図2 正弦波電圧

実際の装置はこの正弦波が入力されることを想定して、つくられています。そのためインバータから出力される電圧はこの正弦波とできるだけ同じになるのが理想です。

ですがインバータの仕組みからすると、正弦波のような滑らかな形をした電圧を出力することができません。

そこでインバータはPWM制御をして、正弦波のような電圧を出力しています。

このPWM制御とはなにか?を解説していきます。

PWM制御とは?

PWMとはPulse Width Modulationの頭文字をとったものです。

PWM制御がどういうものかというと、インバータから出力される波形の幅を変えて、正弦波により近づけることです。

波形の幅は、インバータの4つの接点が開閉するタイミングを長くしたり遅くしたりすることで変えることができます。

このPWM制御を使うとインバータからの出力電圧は図3のように幅が異なる矩形波になります。

PWM変換されたインバータの出力電圧
図3インバータからの出力電圧(PWM変換)

しかし見てわかるように、PWM制御を使っても電圧波形は、正弦波のような滑らかな波形とは全く違います。

波形だけを見ると矩形波と変わりませんので。PWM制御をしても意味がないと思うかもしれませんが、ここで平均電圧をみてみると話が変わってきます。

平均電圧とはある時間内で平均してどれくらい電圧がかかったかということです。

わかりやすく図で考えてみましょう。

図4は先程の図3と同じ波形ですが、ある時間tの中(塗りつぶした部分)での電圧をみてみます。

図4平均電圧を求める

このtはものすごく短い時間とします。

このt中での電圧をtで割ると、時間あたりの平均電圧が求まります。

次に時間がほんの少し進んだ部分の平均電圧を求めて、これを図5のようにどんどん繰り返していきます。

図5平均電圧を求めるその2

そして繰り返し求めてきた平均電圧をグラフに描きます。

するとなんとこの平均電圧の波形は図6の正弦波のようになります!

図6インバータ出力の平均電圧波形

これがインバータからの出力を正弦波に近づける仕組みです。

インバータで周波数を変えられるのはなぜか?

インバータは直流電圧を交流電圧に変える装置ですが、インバータを使う最大の目的は電圧の周波数を変えることです。

この周波数を変えられる仕組みについても解説してみます。

図6はインバータからPWM制御を使って出力した電圧の波形です。この波形の平均電圧を取れば、正弦波に近い波形になることは先程説明しました。

ここで波形の幅を変えて周期を早めてみます。すると図7の波形になります。

図7周波数を変えた時の波形

図7の波形の平均電圧をグラフに描いてみると、図8のようになります。

図8周波数を変えた時のインバータ波形の平均電圧

平均電圧の周期が図6と比べて早くなっているのがわかります。これは周波数が上がったということです。図8では図6に比べて周波数が2倍になっています。

このようにしてインバーターは電圧の周波数を変えることができます。

キャリア周波数とは?

インバータの出力電圧は矩形波であって、その平均電圧が正弦波に近くなることがわかりました。

ただし正弦波に近いと言っても、ギザギザしていて実際の正弦波ではありません。

これを更に正弦波に近づけるにはどうすれば良いでしょうか?

答えは矩形波の数をもっと多くすることです。

図9の波形をみてください。平均電圧はとても短い時間tで電圧を割った値で平均電圧は正弦波に近い形になりますが、もっと細かく見るとカクカクしています。

図9実際の平均電圧波形

ですが矩形波の数を増やすと平均電圧の波形のカクカクも細かくなり、図10のようにより正弦波に近づきます。

図10キャリア周波数を上げたときの波形

矩形波の数はキャリア周波数により決まります。

矩形波の数を多くするにはキャリア周波数は高くすればいいですし、少なくするにはキャリア周波数を低くします。

キャリア周波数が高ければ平均電圧が正弦波に近づくので、キャリア周波数は高くすればするほど良いと思いますが、実際は問題がでてきます。

キャリア周波数を10kHz以上と高くすると外部に出るノイズが増えるので周囲の機器に悪影響を及ぼします。

逆に低いと(2kHzぐらい)キーンとした騒音が発生します。

家電などで使われるインバータは騒音が出ると困るので、ノイズ対策をしたうえでキャリア周波数を高く設定しています。

反対に工場などは元々うるさいので騒音はあまり気にされません。むしろノイズの方が問題になりますので、キャリア周波数は低く設定することが多いです。

おわりに

本サイトでは電気に関してこのような初学者でも分かりやすい解説を行っています。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • インバーターとキャリア周波数を読ませていただきました。
    大変解りやすく勉強になりました。
    どうしても解らないことがあり質問したいのですが、ここでよろしいでしょうか?
    もし他の入り口がありましたら教えてください。
    質問:
    キャリア周波数とはPWMの周波数の事でしょうか?
    図9で平均電圧はカクカクしていますが図10では平均電圧のカクカクが小さくなっていますが図中のPWMの幅は変わっていません、PWMの幅をもっと細かく制御するとカクカクも小さくなると思います。
    ご教示よろしくお願いいたします。

    • コメントありがとうございます。
      キャリア周波数とPWMの周波数は同じではないのですが、
      キャリア周波数を変えればPWMの周波数も変わります。
      キャリア周波数を変えればインバータ内部のスイッチングデバイスの
      ON/OFFの速さが変わるからです。
      PWMの幅を細かく制御すればカクカクが少なくなるのはおっしゃる通りです。
      一応、図のPWMの幅は変えたつもりだったのですが、
      見返してみると自分でも分かりにくいと
      思いました^^;

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