かご形電動機は構造がシンプルなので他の種類の電動機と比べて丈夫です。そのため最もよく使われる電動機です。ただ構造は簡単ですが回転する仕組みを理解するのが少し難しいです。そこで写真や図を使って誰にでもわかりやすく解説します。
電動機の種類
構造や仕組みの解説の前に簡単に電動機の種類に触れておきます。
電動機には色々な種類がありますが、そのなかでも交流電源で動く電動機は図1のように分類されます。
ここで解説するかご形電動機は三相交流電源で動く電動機です。構造が簡単で丈夫なので、電動機の中では最もよく使われています。プラントで使われる電動機のなかでも、このかご形電動機が一番よく使われています。かご形電動機の構造
かご形電動機の構造を解説します。
まず電動機の構造はおおまかにいうと、回転子と固定子に分けることができます。名前の通り、回転子が実際に回転する部分です。
これらの構造をまずは簡単な図でみてみます。
かご形電動機の場合は回転子の構造が他の電動機と異なっていて、下の図2のように二次導体と短絡環で構成されています。二次導体には銅かアルミが使われます。
ちなみにこの回転子がかごににていることが、かご形電動機という名前の由来になっています。
固定子は図3の概略図のように固定子巻線と固定子鉄心で構成されていて、固定子巻線は固定子鉄心に収められています。
図2と図3は簡単な概略図でしたが、実物もみてみましょう。
図4の写真は実際のかご形電動機の内部を写したものです。概略図では回転子と固定子を分けて描きましたが、実際はこの写真のように固定子のなかに回転子が収まっています。その他ぎっしりとつまっていますが、パーツごとに解説していきます。
①は回転子の二次導体です。図2の概略図では導体がみえていますが、実際はこのように鉄心の中に導体が埋め込まれています。
②は短絡環です。これで二次導体同士を短絡しています。
③は軸で、この部分がポンプなどの機械に接続されます。
④は軸受で、スムーズに軸が回転するようにするためのものです。
⑤は冷却ファンです。電動機を運転すると熱が発生するため冷やす必要があります。このファンは軸と繋がっていて、電動機が回転するとこのファンも回転し、電動機自身を冷やします。
次に固定子ですが図4に加えて、固定子を見やすくするために回転子を取り外した図5の写真も併せてみてみましょう。
固定子は⑥の固定子巻線、⑦の固定子鉄心で構成されます。⑥の固定子コイルは電源に接続され、ここに三相交流電圧がかけると回転磁界をつくり、この回転磁界によって電動機を回転させます。(回転原理は後ほど解説します)
かご形電動機が回転する仕組み
ここからは、かご形電動機が回転する原理を解説します。
図6のように回転子は固定子の中に収められています。
これを正面から見ると図7のようになります。
固定子巻線に三相交流電源をかけると回転磁界が発生します。つまり図8のように回転する磁束が生じます。
磁束が回転しながら回転子の二次導体を貫いていますが、これは磁束側からみれば、回転子の二次導体が磁界中を移動していると同じことです。そのためフレミング右手の法則に則って二次導体に起電力vが発生します。
二次導体同士は短絡環によって接続されているので、起電力vが発生すると電流iが図9のように流れます。
そして二次導体に電流が流れると今度は、この電流と磁束によってフレミング左手の法則に則り、二次導体に電磁力が発生します。電磁力の向きは図10の矢印の方向です。
この電磁力によって電動機は回転します。これがかご形電動機が回転する仕組みです。
三相交流電源を流すだけで動くので構造はシンプルですが、回転する仕組みを理解するのはなかなか難しいです。
まとめ
最後にかご形電動機の構造と回転する仕組みをまとめます。
- かご形電動機の回転子は短絡環と二次導体で構成される。
- かご形電動機は回転磁界によってフレミング右手の法則に則り二次導体に電流が流れる。
- 二次導体に電流が流れると、フレミング左手の法則に則り二次導体に電磁力が生じる。
- この電磁力によって電動機は回転する。
おわりに
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コメント
コメント一覧 (2件)
今までどの説明を見ても、磁界が回転していくため、理解が出来ませんでした。この度、
“磁束側からみれば、回転子の二次導体が磁界中を移動していると同じこと”
という、逆転の見方を教えていただけたので、
モーターについての理解が深まりました。
ありがとうございました。
そのように言って頂き大変嬉しいです。
今後も電気に関する解説を増やしていきますので、ご興味のある記事を読んで頂けたら幸いです。