変圧器の電源投入直後は定格電流より大きな突入電流が流れます。これは電源投入時に磁気飽和が起こることが理由です。
ここでは「磁気飽和とは何か?」と「磁気飽和が起こると突入電流が流れる理由」についてわかりやすく解説します。
磁気飽和とは何かの解説
磁気飽和とはコイル(変圧器もコイルの仲間)の巻線に流す電流を大きくしても、それ以上「磁化」が進まなくなった状態をいいます。
以下で詳しく解説していきます。
磁化とは?
まずは変圧器を例に磁化とは何かを説明します。変圧器は図1のように巻線と鉄心から構成されます。
鉄心の中には図2のように分子磁石というとても小さな磁石がバラバラの向きでたくさんあると考えられます。
巻線に電流を流すと、図3のように磁界が発生します。
磁界は空気よりも鉄心の中を通るときのほうが強くなります。そのため図4の矢印のように鉄心中に磁界が形成されます。
また磁石は磁界によって力を受けますので、これも図4のように発生した磁界の方向に分子磁石の向きが揃えられます。
また巻線に流す電流を大きくするほど磁界の強さも大きくなるため、分子磁石の向きをを揃える力が強くなります。
つまり、より多くの分子磁石の向きが揃うということです。
分子磁石の向きが揃うことを磁化といいます。
磁気飽和とは?
磁気飽和とは電流を大きくしてもこれ以上磁化をしなくなる状態のことをいいます。
巻線に流れる電流を大きくするほど、磁界が強くなり磁化が進みます。つまり向きが揃った分子磁石が多くなりますが、図5のように全ての分子磁石の向きが揃えば、それ以上磁化は進まなくなります。
これ以上磁化が進まなくなった状態を「磁気飽和」といいます。
突入電流が流れる理由の解説
突入電流は鉄心が磁気飽和している際に流れます。以下で詳しく解説していきます。
磁気飽和が起こるとインダクタンスが低下する
磁気飽和が起こるとコイルのインダクタンスが低下します。インダクタンスとは「鉄心の磁化のしやすさ」を表す値です。
磁気飽和が起きて磁化が進まなくなった状態は、言い換えると磁化が非常にしにくくなった状態といえます。磁化がしにくいということはインダクタンスが小さいということです。
またインダクタンスが低下すれば交流回路におけるインピーダンスも小さくなります。
インピーダンスが低下すると電流が大きくなる
インピーダンスは交流回路における抵抗ですので、インピーダンスが小さくなれば同じ電圧をかけても、電流が大きくなります。
以上が磁気飽和を起こすと突入電流が流れる(電流が大きくなる)理由です。
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