電気には直流と交流の2種類がある。
電気を学び始めた人にとって、理解しにくいのは交流だと思う。
直流は電圧と電流、抵抗の大きさだけを考えれば計算ができるのに対して、交流はそうではないからだ。オームの法則も交流ではそのまま適用できない。
でも交流は家や工場でよく使われ、直流よりも身近である。身近であるから、電験でも実務の場面でも、交流についての計算をする機会は多い。
だからこそ早めに直流と交流の違いを理解することが、電験の勉強や実務において大事である。
ここでは直流と交流の違いと、交流を考えるうえで大事な要素を解説する。
直流とは?
まずは直流から解説する。といっても中学高校でも学んでいると思うので、電気を学び始めた人でも知っていることが多いかもしれない。読み飛ばしてしまってもいい。
直流は身近な例でいうと、バッテリーから出力される、値が一定で変化しない電圧や電流である。
波形で描くと、図1のようになる。
直流ではオームの法則がそのまま使える。つまりV=RIの式で電圧や電流が計算できる。
電験ではオームの法則を使って電圧や電流を求める問題が出る。式自体は簡単だが、複雑な構成の回路が出てきたりして、その点が難しい。これについてはまた別の場所で解説をする。
交流とは?
交流とは周期的に変化する電圧や電流のこと。これは波形で見た方が分かりやすい。図2のような波形を描く電圧や電流を交流と呼ぶ。
縦軸は大きさ、横軸は時間経過を表す。
交流は家庭のコンセントや工場の動力など、多くの場所で使われる。
直流と交流の違いで大事な要素
直流と交流の違いで大事な点を2つ解説したい。波形の違いだけではなく、電験の勉強をするうえでは以下の2点を理解する必要がある。
- 交流は実効値で考える
- 交流には位相の概念がある
それぞれ解説していく。
交流は実効値で考える
波形を見れば分かるように、交流は常に変動していて一定の値ではない。
それなのに、家のコンセントは交流の100Vとか言ったりする。
この100Vとは何なのだろうか?
実は、この100Vは実効値と呼ばれるものである。
単に交流の100Vといった場合、それは実効値が100Vという意味である。
実効値は直流の値に相当する。
つまり電圧でいえば、常に変化する交流電圧を、直流に換算したら何V(ボルト)になるか?というのが実効値である。
ではどうやって実効値に換算するかというと、ピーク値を√2で割ると求められる。
このことを図で説明してみる。図3は正弦波の100Vの交流電圧である。家のコンセントから出る電圧はこの波形になる。
図3に示すように、この波形のピーク値は約141Vである。
これを√2で割ると100Vになる。交流の100Vはこのように求める。
ここで注意点がある。√2で割れば実効値が求められると説明したが、これで実効値が求められるのは正弦波に限られる。
例えば図4のような波形では、実効値を求めるための計算方法が違う。
ただし電験で扱う電気の波形は、基本的には正弦波である。
だからピークを√2で割れば実効値が求められると、とりあえず覚えておけば今のところ十分である。
交流には位相の概念がある
もう一つ交流で重要な要素は、交流には位相の概念があること。
位相というのは、簡単にいえば波形の時間的なずれのことである。
これも図で見た方が分かりやすい。図4は電圧と電流の交流波形である。
この2つの波形の大きさは同じである。しかし微妙に波形がずれているのが分かると思う。
横軸は時間を表しているので、時間的にずれがあることを表している。
これが位相の概念であり、このずれの大きさを位相差と呼ぶ。
位相差は交流を考えるうえでかなり重要なことである。どのように重要なのか具体例を次のページで解説しようと思う。
他にも直流と交流の違いはあるが、割と理解はしやすいので、この先電験の勉強を進めていけば自然に理解できると思う。
しかし上で挙げた2つの違いは電験の問題を解くうえで重要であり、にもかかわらずきちんと理解する機会があまりない。
そのため電験の勉強を始める前に意識しておくと良い。
コメント