電力会社から各地へ電力を送るとき、多くの場合では三相交流で送電されます。
なぜ単相交流ではないのか?
これは三相交流で送電するほうが経済的メリットがあるからです。この経済的メリットが何かを解説します。
三相交流で送電するメリット
結論からいいます。
同じ電力を送る場合、三相交流で送電した方が単相交流よりも電線を細くできます。電線は太くなるほど高価になります。送電線は非常に長いので、極力細い電線を使う方が経済的です。
ケーブルを細くでき、送電コストを下げられることが三相交流で送電するメリットです。
ではなぜ電線を細くできるかを解説していきます。
三相交流で送電する場合と、単相交流で送電する場合の比較
三相交流で送電すると、同じ電力を送る場合、単相交流より1線あたりの電流が小さくなります。
そのため電線のサイズを細くすることができて経済的です。これについて詳しく解説します。
同じ電力を送るなら、三相は単相より電流が小さくて済む
図1は三相交流で負荷に電力を送っている場合の、簡易的な回路です。
線電流をI、線間電圧Vとすると負荷へ供給できる電力は以下で求められます。
$$電力=\sqrt{3}VIcosθ$$
続いて図2は単相交流で負荷に電力を送っているときの回路です。
ここで負荷に三相で送った電力と同じ√3VIcosθを供給するには、電流が√3倍になる必要があります。
従って同じ電力を送るなら、三相の方が単相よりも\(\frac{1}{\sqrt{3}}\)倍の電流で済むことが分かります。
同じ電力を送るなら、三相は単相より電線を約12%細くできる
電流が少なくて済むということは、電線の導体サイズも小さくて済みます。
導体の抵抗は導体面積に反比例します。電線の許容電流が導体面積に比例するとすれば、同じ電力を供給するのに単相だと三相よりも1線あたり√3倍≒1.7倍の太さの電線が必要です。
図3のように、三相の場合の電線太さを1とすると三相では3本の電線が必要なので合計は3。
単相の場合は電線の数は2本ですが、三相に比べ1.7倍の太さの電線が必要なため合計は3.4。
このように三相で電力を送る方がトータルの電線サイズが12%小さくなります。
またジュール熱は電流の2乗に比例するので電流が減ることでより発熱量が減ります。加えて電線全体に占める表面積の割合も増えるため放熱量も増えます。
電線が流せる電流(許容電流)は発熱量と放熱量のバランスで決まりますので、実際は12%より電線を細くすることができます。
そのため三相の方が単相よりも送電コストにおいて有利です。このような理由から、送電は三相交流で行われることが多いです。
ちなみに
ちなみに今回は電線サイズで三相交流の優位性を解説しましたが、三相電力であれば三相誘導電動機が使えるメリットもあることを付け加えておきます。
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