フェランチ効果とは送電端よりも受電端の方が電圧が高くなる現象のことです。
送電をする場所(送電端)と受電をする場所(受電端)はケーブルで接続されています。そのため通常はケーブルなどの抵抗による電圧降下が起きて、受電端の電圧が低くなります。
しかし条件によっては、これとは逆に受電端の電圧が上がることがあります。
なぜそのようなことが起こるのか?これがフェランチ効果によるものです。
ここではこのフェランチ効果の原理について解説します。
フェランチ効果が発生する要因
フェランチ効果は送電する回路の電流が進み電流になることで起こります。進み電流になる条件は、回路の容量性リアクタンスが大きいことです。
つまり回路の容量性リアクタンスが大きいときにフェランチ効果が起こります。
受電電圧を計算してフェランチ効果を解説
実際に計算をして、フェランチ効果が起こることを確かめてみます。
図1は送電場所と受電場所を接続する線路を簡単に描いたものです。線路にはインダクタンス成分(L)とキャパシタンス成分(C)があります。
キャパシタンス成分は線路に均等にあると仮定して、両側に半分ずつ描いています。ちなみにこの図では抵抗成分は無視して描いています。

ここでLを50[mH]、Cを5[μF]として周波数は60[Hz]と仮定します。この時の受電電圧(Er)を求めてみましょう。
まず受電電圧(Er)を求めるために、図2の各リアクタンス(XL,Xc)と電流Iを求めます。求め方は↓の式の通りです。


次に以上の計算結果から受電電圧を求めます。受電電圧は以下の式で計算できます。

この計算結果から、受電電圧は送電電圧よりも1.9%高くなることがわかりました。
つまりフェランチ効果が発生したということです。
フェーザ図を描いてフェランチ効果を解説
フェーザ図を描くことでもフェランチ効果が起こることを確認できます。
図3の様にインダクタンスとキャパシタンス分のリアクタンスの大きさをXL、XCと表します。

図3の回路では、受電電圧Erと右側のキャパシタンス部分(XCの部分)は並列に接続されているので同じになります。
また電流Iはキャパシタンス部分に流れる電流です。そのため受電電圧Erに対して、電流Iは90°進みます。
このことをフェーザ図で描くと図4の様になります。

また受電電圧Erは下の式で求められます。

jXL×Iの式でIは90°進んだ電流ですので、下の式に書き換えられます。

詳しい説明は省きますが複素数jがついていれば、その電流(電圧の場合もある)は90度進んでいることを表します。また-jであれば90度遅れていることを表します。
そのため受電電圧Erを計算すると以下の結果になります。

これをフェーザ図で描くと図5の様になります。

図5のフェーザ図から、送電電圧ESよりも受電電圧Erの方が大きくなることが分かりました。
これはフェランチ効果によるものです。
実際にフェランチ効果が起こる条件
ここまでで行った計算とフェーザ図での確認によって、容量性リアクタンス(Xc)が大きいときにフェランチ効果が起こることに気づいたでしょうか?気づかなかった方は一度読み返してみてください。
さて本題ですが、フェランチ効果は線路の容量性リアクタンスが大きいときに起こります。これは実際にはどのようなケースでしょうか?
線路が長い場合
まず1つ目は線路が長い場合です。線路が長いと静電容量が増加します。これに伴い容量性リアクタンスが増加してフェランチ効果が起こりやすくなります。
受電場所の負荷が軽い場合
2つ目は受電場所の負荷が軽い場合です。これは例えば工場などが長期休転に入って、設備を運転しなくなった場合などになります。
工場ではモータが多数運転しています。モータは誘導性の負荷ですので、電流は遅れになります。
そのため通常は進相コンデンサ(SCとも言う)を投入して進み電流を増やして位相のバランスを取っています。
長期休転に入るとモータが停止して線路の誘導性リアクタンスが低下します。ここで進相コンデンサが入ったままだと、相対的に線路の容量性リアクタンスが大きくなり進み電流が多くなります。
このためフェランチ効果が起こり、受電場所の電圧が大きくなります。
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