「落差」と「流量」が水力発電の発電量にどう影響するのか?

水力発電の仕組みはだいたいわかったんですけど、「落差」とか「流量」ってよく出てきますよね?
それって、発電とどう関係してるんですか?

水力発電の「出力」は、水の量(流量)水が落ちる高さ(落差)によって決まります。
この2つが、水力発電のカギを握っているんですよ。

目次

水力発電の出力の求め方

水力発電の出力とは、発電する電力のことです。まず、出力はシンプルに以下の式で求められると覚えてください。

$$出力[kW]=9.8×流量[m^3/s]×落差[m]$$

重力加速度とは?

この9.8はなんですか?

この「9.8」という数字は、重力加速度を表しています。
地球上では、物体は1秒ごとに約9.8 m/sずつスピードが増して落ちていきます。

つまり、水が落ちる勢いのもとになる力ですね?

その通りです。この重力の働きによって、水は位置エネルギーを持ちます。
高いところから水が落ちることで、そのエネルギーが電気に変わるのです。

流量とは?

じゃあ次に流量とはなんですか?

流量[m³/s]とは、1秒間にどれくらいの水が流れるかを表す値です。
たとえば日本最大級の水力発電所では約90m³/sの流量で発電ができます。
これは1秒間に95立方メートル、つまり95,000リットルの水が流れてくるということです。

めっちゃ多いですね!

想像できないほどの量の水ですよね。たくさんの水を使うほど、大きなエネルギーを生めるのでより多く発電できます。

水力発電は水の位置エネルギーを電力に変える発電方法です。
詳しくは後述しますが、位置エネルギーはより重いものが、より高いところにあると大きくなります。

流量が多い=多くの水がある=重い

このようになるので、流量が多いほどより多く発電ができます。

落差とは?

落差(m)は、水がどれだけ高いところから落ちるかを示す高さです。
高いところから水を落とせば、それだけエネルギーも大きくなります。

高い滑り台ほどスピード出る感じですね

まさにそのイメージです。
水力発電では、この高さ(落差)をうまく活用するためにダムを作ったり、山の地形を利用したりしています。

位置エネルギーと水力発電の出力の関係

始めに紹介した以下の式

$$出力[kW]=9.8×流量[m^3/s]×落差[m]$$

実はこれ、水が持つ位置エネルギーを元にした式なんです。

位置エネルギーって、物理の「高いところにある物が持つエネルギー」のことですよね?

その通りです。
位置エネルギーは以下の式で表されます。

$$位置エネルギー[J]=重力加速度[m/s^2]×質量[kg]×高さ[m]$$

この考え方を水力発電に当てはめると、質量は水の重さ高さは水の落差になります。

なるほど。でも水力発電の出力の式は「9.8×流量×落差」ですよね?
位置エネルギーの式と、ちょっと違うような気がします。

とても良いところに気づきましたね。
実は、この「9.8 × 流量 × 落差」という式は、
位置エネルギーの式を毎秒あたりのエネルギーに変換したものなんです。

位置エネルギーの式はエネルギーの量を表しています。対して水力発電の出力の式は毎秒あたりのエネルギーを表しています。ポイントは電力[W]というのは毎秒あたりのエネルギーであることです。

この違いを理解することが水力発電の理解に繋がります。

どのように式が変換されるかを順を追って説明していきますね。

まず以下の式は位置エネルギーの式で、エネルギーの量を表しています。
[]の中の単位にも注目してください。
特にエネルギーの単位が[J(ジュール)]であることに注意です。

$$位置エネルギー[J]=重力加速度[m/s^2]×質量[kg]×高さ[m]$$

ここで右辺の質量[kg]の部分を流量×密度に置き換えます。

$$重力加速度[m/s^2]×流量[m^3/s]×密度[kg/m^3]×高さ[m]$$

確か水の密度は1000[kg/m3]ですよね?

そうです!
当然ですが水力発電では水を使いますので、密度には水の密度の1000をいれます。

$$重力加速度[m/s^2]×流量[m^3/s]×1000[kg/m^3]×高さ[m]$$

ここで数学っぽく、重力加速度や流量を以下の記号に置き換えます。
・重力加速度はg
・流量はQ
・高さはh

単位はどうすればいいんですか?

実は単位同士も掛け算をすることができます。
これを踏まえて計算をすると以下の式になります。

$$g[m/s^2]×Q[m^3/s]×1000[kg/m^3]×h[m]=1000gQh[kg・m^2/s^3]$$

また[J](ジュール)という単位は[kg]と[m](メートル)と[s](秒)を使って以下のように表せます。

$$[J]=[kg・m^2/s^2]$$

1J=1N・m(ニュートンメートル)です。
そして1N=1kg・m/s2でもあります。

だから1J=1kg・m2/s2と表せます。

しかしここでは、これは覚えなくても大丈夫です。単位はこうやって変換できるんだなぁ。くらいに思っておいてください。

そして今まで今まで求めた式と単位を合わせると以下のように変換できます。

$$1000gQh[kg・m^2/s^3]=1000gQh[J/s]$$

単位が[J/s]になってる!
これは1秒あたりのエネルギーってことですね?

その通り!
電力も1秒あたりのエネルギーです。
つまり[J/s]=[W](ワット)ですので、これは水力発電の出力電力を表します。

発電所の出力電力は大きいので、[W]ではなく[kW]で表します。よって↑の式の1000をkに置き換えて、[kW]で表します。

$$水力発電の出力=1000gQh[J/s]=1000gQh[W]=gQh[kW]$$

そして重力加速度のgは地球上では9.8です。よってgを9.8として、

$$9.8Qh[kW]$$

このようにします。参考書などでみる水力発電の式になりましたね。

ちなみに9.8Qh[kW]は理想的な場合の出力です。現実的には水を流す際や発電機が回転するときなどにロスが生じます。ロスの少なさを効率といいますが、実際に出力を求める際はこの効率を掛けて計算をします。

次から実際に水力発電の出力を求める問題を解きながら考えてみましょう。

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