火力発電では燃料をボイラで燃やし、そこで出る熱で水から蒸気をつくりタービンを回して発電をします。しかしタービン回す蒸気は私たちに身近な蒸気とは異なり過熱蒸気と呼ばれる蒸気です。
この過熱蒸気を作るための設備が過熱器です。
このページでは過熱蒸気と過熱器とは何か?過熱器の役割などを解説します。
過熱器の役割は過熱蒸気をつくること
過熱器の役割はタービンを回すための過熱蒸気をつくることです。
私たちが日常的に目にする蒸気は飽和蒸気とよばれる蒸気です。
例えばやかんで湯を沸かしてできる蒸気が飽和蒸気です。水は(大気圧下では)100℃で蒸気になるので、やかんから出る蒸気も100℃です。
ところで蒸気は気体であるため目には見えません。
しかしやかんから出る湯気は図1のように白く見えます。
これはやかんから出た蒸気がすぐに冷やされ、100度未満となり液体の水に戻るためです。
そのため飽和蒸気はギリギリ蒸気になった水といえます。だからちょっと冷やされるとすぐに液体へ戻ってしまいます。
過熱蒸気とは飽和蒸気を更に熱した蒸気
一方で過熱蒸気は、冷やされてもすぐには液体に戻らない蒸気です。
理由は飽和蒸気を更に熱してつくる蒸気だからです。そのため過熱蒸気の温度は100℃以上になります。図2は過熱蒸気のイメージです。
やかんで湯を沸かしてできた蒸気を更に何かしらの方法で(図では火で)熱して過熱蒸気をつくっています。
そしてやかんから出た蒸気は目には見えません。過熱蒸気は多少冷やされても100℃未満ならず、水に戻りにくいためです。
過熱器の仕組みと設置される場所
図2のイメージでは、やかん内の蒸気を火で熱していました。しかし実際の火力発電では、ボイラで燃料を燃やした際に生じる排気ガスの熱で蒸気を熱します。
このための設備が過熱器です。
図3は過熱器が設置される場所を示しています。ボイラでつくった蒸気はタービンに送られますが、その前に過熱器を通って、過熱蒸気になってからタービンに届きます。
過熱器で過熱蒸気を作る理由
では過熱器で過熱蒸気をつくる理由はなんでしょうか?
いくつかありますが、主な理由は以下に記述する2つです。
タービン内部に水滴がつかないようにするため
1つ目の理由は、タービン内部に水滴がつかないようにするためです。
蒸気でタービンを回すことを別の言い方で表現すると、蒸気のエネルギーをタービンに与えるとも言えます。
蒸気のエネルギー≒蒸気の熱です。よってタービンを回す際に蒸気の熱は下がります。
飽和蒸気は温度が下がるとすぐに液体になってしまうので、仮に飽和蒸気でタービンを回すとすれば、内部で蒸気は液体に戻ってしまいます。
タービン内に液体がついてしまうとタービンの羽の損傷に繋がったり、発電効率の低下を引き起こします。
よって過熱蒸気を使ってタービンを回すことでこれらの問題を解消しています。
発電効率向上のため
過熱蒸気をつくる理由2つ目は、水滴で効率が下がる話とは別に発電効率をあげるためです。
排気ガスは最終的には煙突から排出されるものです。その際は排気ガスの熱も煙突から捨てられてしまいます。
この排気ガスの熱をいかに無駄無く使うかが発電効率UPに重要です。
蒸気は温度が高いほどエネルギーを多く持ちます。蒸気のエネルギーはタービンを回すためのエネルギーになるので、捨てられるはずだった排気ガスの熱を蒸気に移すことができれば無駄になる熱が減ります。
そのため発電効率が向上します。
おわりに
以上、過熱器の解説でした。
過熱器は捨てられるはずの熱をいかに無駄無く使うかを担う設備です。↓の記事で説明している節炭器とともに火力発電の効率UPに貢献しています。
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