表皮効果とは周波数が高くなるほどケーブルの中心を電流が流れにくくなる現象のことです。
表皮効果は主に高周波の電子回路などで問題になる他、商用周波数(50Hz、60Hz)であっても長距離にわたって電力を送るときに問題になります。
ここでは表皮効果が起きる原理を解説します。
表皮効果が起こる原理
表皮効果が起きる原因は、渦電流が本来の電流の流れを妨げるからです。
ケーブルに電流が流れると磁界が生じます。そしてこの磁界によって渦電流が流れます。渦電流は本来の電流の流れを妨げる方向に発生するため、電流の流れが妨げられるのです。
文だけでは分かりにくいので図解します。
図1はあるケーブルに交流電流iが流れている様子です。円筒がケーブル、矢印が電流の流れと考えてください。
電流が流れるとその周囲には磁界Hが生じます。それを描いたのが図2です。
磁界の向きは右ねじの方向になります。
磁界が生じると、レンツの法則によりこの磁界Hを妨げる向きに電流が流れます。それを描いたのが図3です。
磁界Hを妨げるためには、Hと反対方向に磁界H’が発生する必要があります。そして磁界H’によって渦電流i’が流れます。
この渦電流i’はケーブルの中心部分では電流iとは逆の向きに流れています。つまり図4で分かるように本来の電流iの流れを妨げることになります。
そのためケーブルの中心部分では電流が流れにくくなります。
これが表皮効果の原理です。
どの様なときに表皮効果が起こるのか?
表皮効果は交流電流が流れるときはいつも起こります。ただし周波数が低い場合は影響は軽いです。
表皮効果の影響が大きくなるのは周波数の高い電流が流れるケースです。
この理由はファラデーの法則の式から分かります。
この式が何を意味しているかというと、1秒間あたりの磁束の変化量が大きいほど起電力が大きくなるということです。
電流の周波数が高くなると、電流の周りに生じる磁界(≒磁束)の変化量が大きくなります。そのため起電力も大きくなります。
起電力が大きくなると、その起電力により流れる渦電流も大きくなります。更に渦電流が大きくなることで本来の電流がより流れにくくなります。つまり表皮効果の影響が大きくなります。
この様な理由で、流れる電流の周波数が高いほど表皮効果の影響が大きくなり、ケーブルの中心部を電流が流れにくくなります。
表皮効果の影響を小さくするには?
表皮効果の影響を小さくするためには、単芯ではなくより線のケーブルを使うのが効果的です。
例えばインバータで駆動するモータの筐体アースは平編線が使われることがあります。これは表皮効果の影響を小さくするためです。
おわりに
本サイトでは電気に関してこのような初学者でも分かりやすい解説を行っています。
もしこれを解説してほしい!という要望や質問がありましたらお問い合わせかXのDMでご連絡いただければと思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
実際に銅パイプに高周波電流を流し銅の発熱を測定すると、表皮効果による抵抗による、発熱以上に発熱するのはなぜですか。表皮効果による抵抗以上に大きな抵抗が存在するということでしょうか。
コメントありがとうございます。
パイプのように中心がくり抜かれた導体だと表皮効果の影響は小さくなります。そのため発熱の原因は電流に対してパイプの抵抗値が高いからだと思います。つまりパイプの肉厚が薄いからだと思われます。