水力発電の出力を求める公式は以下です。
$$P=9.8Q(H_0-h_G)η_Pη_G[kW]$$
単純に出力を求めるならこの式を暗記して数値を入れるだけです。しかし式の意味と導出方法を理解すれば応用的な問題に対応できるようになります。
ここでは水力発電の式について、意味や単位変換も含めた導出方法を丁寧に分かりやすく解説していきます。
公式の9.8って何?なんで単位が[kW]になるの?hGとは?
このような疑問をお持ちの方はぜひ最後までお読みください。
水力発電の発電の仕組み
水力発電の公式を理解するには水力発電の仕組みをイメージできるようになりましょう。
といっても水力発電のイメージは簡単です。水力発電は水の位置エネルギーを水力発電機で電力に変換する。これだけです。
H[m]にあるm[kg]の水の位置エネルギーはmgH[J]です。(gは重力加速度で9.8です)
このエネルギーをH[m]下にある水力発電機を通して電気エネルギーに変換をする。これが水力発電のイメージです。
水の位置エネルギーと流量Qの関係
しかし実際に水力発電の出力を考える時は、水の重さではなく流量Q[m3/s]を使います。位置エネルギーmgH[J]のmをQに置き換えると、1000QgH[J/s]となります。
$$mgH[J]=1000QgH[J/s]$$
なんで1000が出てきて単位も[J/s]に変わってるんだ?
これについて解説していきます。
Q[m3/s]=1000Q[kg/s]
1000が出てきた理由は水1[m3]が1000[kg]だからです。そのため[m3]=[1000kg]です。
よって$$Q[m^3/s]=Q[1000kg/s]=1000Q[kg/s]$$になります。
単位[J]ではなく[J/s]になる理由
では続いて単位が[J/s]になった理由についてです。
元の位置エネルギーの式は$$m[kg]×g[m/s2]×H[m]$$ですので、
単位はmgh[kg・m2/s2]となります。
ここで[kg・m2/s2]は[J]になります。(これは定義なので覚えましょう)
一方で1000QgHの単位は
$$1000Q[kg/s]×g[m/s2]×H[m]=1000QgH[kg・m^2/s^2・s]$$
となり分子側にsが余ります。そのため単位は1000QgH[J/s]になります。
電力の単位変換を理解する
ここまでで流量Qと重力加速度g、高さHから、1000QgH[J/s]という式を導けました。
ですが求めたいのは電力[kW]です。そのため上記の式をkWに変換しましょう。
ここで覚えるべきことは、[J/s]=[W]であることです。つまりWという単位は1秒あたりのエネルギーを意味しています。
よって$$1000QgH[J/s]=1000QgH[W]$$になります。また1k=1000です。
そのため$$1000QgH[J/s]=QgH[1000W]=QgH[kW]$$と求められます。
高さHは有効落差
ここまではHを単なる高さとして考えてきました。しかし実際は有効落差を使う必要があります。
有効落差はH0を水の高さとして、損失水頭Hgを引くことで求めます。よって
$$有効落差H=H0-Hg$$
となります。
損失水頭とは?
ここで出てきた損失水頭とは高さのロスのことです。水は配管などを通って発電機まで送られます。配管などを通る際は摩擦やカーブなどで、高さのロスが生じます。
これを損失水頭といいます。高さのロスなので発電に使われる高さは実際の高さから損失水頭を引く必要があります。
効率をかければ公式導出完了
最後に効率をかければ公式の導出は完了です。水力発電の出力を求める際は以下の2つの効率を考える必要があります。
- プロペラの効率ηP
- 発電機の効率ηG
プロペラは水が当たって回転する部分です。水の位置エネルギー全てが回転のためのエネルギーになる訳ではなくロスがあります。これを効率で表しています。
またプロペラの回転によって発電機が回りますが、回転のエネルギーも全て電力に変換される訳ではありません。これもロスがあります。
よって水力発電の出力にはこれら2つの効率をかける必要があります。そのため水力発電の出力の公式は
$$P=9.8Q(H_0-h_G)η_Pη_G[kW]$$となります。(gを9.8にしています)
おわりに
本サイトでは電気に関してこのような初学者でも分かりやすい解説を行っています。
もしこれを解説してほしい!という要望や質問がありましたらお問い合わせかXのDMでご連絡いただければと思います。
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