電験3種 各科目の解説
電圧の種別(低圧・高圧・特別高圧)と電圧維持の基準値
「低圧」と「高圧」というのは単に電圧が低い、高いという話ではなく、省令で明確な数値が定められています。
この電圧の区分は、電気設備の保安規程を作る上でも、電力会社が電気を供給する上でも、最も基礎となるルールです。
電験3種の法規科目では、「電圧の区分(定義)」と「電圧の維持基準」が穴埋めや正誤判定で頻繁に出題されます。
単なる数字の暗記だと思って取り組むと、交流と直流で数値が違ったり、似たような数字が出てきて混乱しがちです。
この記事ではなぜその電圧で分けられているのか?
なぜ100Vではなく101Vが基準なのか?という理由を含めて解説します。
数字の背景にある意味を知れば、試験中にど忘れしても論理的に答えを導き出せるようになりますよ。
電圧の種別(低圧・高圧・特別高圧)の定義
電気設備技術基準(電技)では、電圧の大きさに応じて「低圧」「高圧」「特別高圧」の3つに区分しています。
これは、電圧が高くなるほど危険度が増し、求められる絶縁性能や保安距離が厳しくなるためです。
結論から言うと、以下の表の数値を覚えることが第一歩です。
【表:電圧の種別(電気設備技術基準 第2条)】
| 区分 | 直流 (DC) | 交流 (AC) |
| 低圧 | 750 V 以下 | 600 V 以下 |
| 高圧 | 750 V を超え、7000 V 以下 | 600 V を超え、7000 V 以下 |
| 特別高圧 | 7000 V を超えるもの | 7000 V を超えるもの |
なぜ交流と直流で「低圧」の基準が違うのか?
ここで疑問に思うのが、「なぜ低圧の上限は、直流だと750Vで、交流だと600Vなのか?」という点です。
これは、人体への危険性の違いに関係しています。
一般的に、同じ電圧値であれば、交流(AC)の方が直流(DC)よりも人体へ電流が流れやすく、感電した際のリスク(心室細動など)が高いとされています。そのため、交流の方が少し厳しい(=低い)電圧で「ここまでは低圧」と区切られているのです。
以上が理由の一つですが、もう一つ理由があります。
それは路面電車の電圧が750Vであることです。これを「高圧」と区分してしまうと、安全対策や設備の絶縁面で厳しい基準をクリアしなくてはならず、実用面で不便になるから。という話があります。
それでいいの?と思いますが法令は実用面も考慮して決められますので、特におかしな話でもありません。
「7000V」という境界線
高圧と特別高圧の境界である7000Vは、直流・交流共通です。
配電線(電柱の上の電線)の多くは6600Vで送電されていますが、これは「7000V以下」なので「高圧」に分類されます。
一方、2万ボルト(22kV)や6万6千ボルト(66kV)といった送電線の電圧は7000Vを超えているため、「特別高圧」となります。
最近は太陽光発電などで、直流1500Vを扱う設備も増えてきました。国際規格(IEC)との整合性から「低圧」の範囲を拡大する動きもありますが、現在の電験3種の「法規」科目(電気設備技術基準)においては、上記の表の数値(DC 750V / AC 600V)が正解です。試験では必ず現行の法令通りに答えましょう。
電気事業法による「電圧の維持基準」
次に重要なのが、電力会社(一般送配電事業者)が需要家(私たちの家や工場、ビルなど)に電気を届ける際、「電圧をどの範囲に保たなければならないか」というルールです。これを「電圧の維持基準」といいます。
これは電気事業法施行規則 第38条で定められています。
【表:電圧の維持基準】
| 標準電圧 | 維持すべき電圧の値 |
| 100 V | 101 V ± 6 V (95 V 〜 107 V) |
| 200 V | 202 V ± 20 V (182 V 〜 222 V) |
なぜ「100V」ではなく「101V」が基準なのか?
ここが多くの初学者がつまずくポイントです。
「コンセントは100Vなのに、なぜ基準値は101Vなの?」と思いますよね。
これは「配電線での電圧降下」を考慮しているからです。
変電所から送り出された電気は、電線を流れるうちに電線の抵抗によって電圧が少しずつ下がっていきます(電圧降下)。
電力会社は、需要家の元に届く時点でちょうど良い電圧になるように、あらかじめ少し高めの電圧で電気を送り出しています。
そのため、法的な維持基準の中心値も、100Vジャストではなく少し余裕を持たせた101V(200V級の場合は202V)に設定されているとイメージしてください。
- 1%の余裕をみる
- 100V系はプラマイ6V
- 200V系はプラマイ20V
このように暗記しましょう。
よくある勘違い・つまずきポイント
1. 「対地電圧」との混同
法規科目では「対地電圧150V以下」や「対地電圧300V以下」という言葉が出てきますが、これは「接地(アース)と電線との間の電圧」の制限であり、今回解説した「低圧・高圧」の区分とは別の話です。
- 電圧区分(低圧):線間電圧が AC 600V 以下
- 屋内配線の制限:対地電圧 150V 以下(住宅など)これらを混同しないように整理して覚えましょう。
2. コンセントの電圧を測ったら105Vだった!異常?
「家のコンセントにテスターを当てたら105Vもあった。故障?」と心配になる人がいますが、これは正常です。
先ほどの維持基準(95 V 〜 107 V)によれば、107Vまでは法律の範囲内だからです。
変圧器(変電所)に近い家では電圧が高めになり、遠い家では低めになる傾向があります。
簡単な確認問題
理解度をチェックするために、簡単な問題を解いてみましょう。
問題1
電気設備技術基準において、交流の「高圧」の範囲として正しいものはどれか。
- 600V を超え、6600V 以下
- 600V を超え、7000V 以下
- 750V を超え、7000V 以下
正解と解説
答え:2
解説
低圧と高圧の境界は、交流の場合 600V です(直流は750V)。
高圧と特別高圧の境界は、交流・直流ともに 7000V です。
したがって、「600V を超え、7000V 以下」が正解です。「6600V」は一般的な配電電圧ですが、定義の境界値ではありません。
問題2
標準電圧200Vの供給地点において、電気事業法施行規則により維持すべき電圧の範囲として、正しいものはどれか。
- 180V 〜 220V
- 190V 〜 210V
- 182V 〜 222V
正解と解説
答え:3
解説
200V級の維持基準は202V±20です。
上限:202 + 20 = 222V
下限:202 – 20 = 182V
よって、182V 〜 222V の範囲が正解となります。
過去問解説 平成24年度 法規 問4(改題)
実際の試験では、どのように出題されるかを見てみましょう。
問題文
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく電圧の区分に関する記述である。
電圧は、低圧、高圧及び特別高圧の三種に区分される。低圧は直流にあっては( ア )V以下、交流にあっては( イ )V以下のもの、高圧は直流にあっては( ア )V、交流にあっては( イ )Vを超え、( ウ )V以下のもの、特別高圧は( ウ )Vを超えるものをいう。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる数値の組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) ア:600 イ:600 ウ:7000
- (2) ア:750 イ:600 ウ:6000
- (3) ア:750 イ:600 ウ:7000
- (4) ア:600 イ:750 ウ:7000
- (5) ア:750 イ:700 ウ:7000
何を聞かれている問題かの整理
電圧の3区分(低圧・高圧・特別高圧)の具体的な数値定義を正確に覚えているかを問う、法規のド定番問題です。
解き方の手順
- 低圧の定義を思い出す
- 直流(DC)は 750V 以下。
- 交流(AC)は 600V 以下。
- この時点で、(ア)は750、(イ)は600であることが確定します。選択肢は(2)か(3)に絞られます。
- 高圧と特別高圧の境界を思い出す
- これは直流・交流共通で 7000V です。
- よって(ウ)は7000。
- 選択肢を選ぶ
- ア:750、イ:600、ウ:7000 の組み合わせになっている (3) が正解です。
答えと解説
正解:(3)
間違いやすいポイントとして、(2)の「6000V」があります。高圧配電線でよく聞く「6600V」や、昔の基準などが頭をよぎると間違えやすいですが、定義上の区切りはあくまで「7000V」です。
ごっちゃになりやすいですが、私は以下の感じで電圧の区分を覚えていました。
- 「交流はロクなことがない(600V)、直流はなごむ(750V)、特別高圧はラッキーセブン(7000V)」
- 交流はプラス・マイナスを行ったりするから感電すると筋肉が痙攣して危ない。だから交流の方が厳しい(数値が小さい)
この問題から学べること
- 法規科目では、数値の暗記が合否を分けます。特に定義に関する数値は、知っていれば5秒で解けますが、知らないと悩み続けて時間を浪費します。
- 「直流と交流で値が違うもの」と「共通のもの」を区別して整理する癖をつけましょう。
※本記事の情報は、執筆時点での電気設備技術基準および電気事業法に基づいています。試験対策としては最新の法令を確認するようにしてください。












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