電験3種 各科目の解説
電路の絶縁②:絶縁耐力試験の概要(試験電圧の決め方)
法規科目の計算問題の中で、絶対に落としたくないのが「絶縁耐力試験」の電圧計算です。
なぜなら試験においても頻出ですし、実務でも非常に重要なものだからです。
この記事では、電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)に基づき、試験電圧の決め方を解説します。
ここを理解すれば、高圧受電設備の実務でも役立つ知識が身につき、試験での計算ミスもゼロになります。
この記事で解説する内容の全体像と結論
まず、結論から整理します。絶縁耐力試験の計算問題で覚えるべきポイントは以下の3点に集約されます。
- 「最大使用電圧」を基準にする(公称電圧や定格電圧ではない)
- 接地方式と電圧区分で「倍率」が決まる(1.5倍、1.25倍など)
- 「最低電圧」のルールがある(計算結果が低すぎる場合の足切りライン)
試験では絶縁耐力試験の試験電圧がいくらか?といった問いが出ます。
試験電圧は以下の式で求められます。
$$\text{試験電圧} = \text{最大使用電圧} \times \text{倍率}$$
このシンプルな式を正しく使いこなすための手順を、順を追って見ていきましょう。
基礎からの解説:絶縁耐力試験とは?
絶縁耐力試験のイメージ
電気設備(変圧器やケーブルなど)は、電気を流しても外に漏れないように「絶縁」されています。
しかし、雷や事故で異常な高電圧がかかったとき、その絶縁が破れてしまうと大事故になります。
そこで、通常よりも高い電圧を一定時間(10分間)かけ続けても耐えられるか?をチェックするのが絶縁耐力試験です。
イメージとしては、風船にわざと多めの空気を入れて、割れないか確認するテストに似ています。
用語解説:最大使用電圧と公称電圧の違い
ここが最初のつまずきポイントです。
- 公称電圧:通常よく使われる電路の電圧のことです。(例:6.6kV、22kV、66kV など)
- 最大使用電圧:平常時に電路にかかる可能性がある最大の電圧です。電路の電圧は常に一定ではなく、場合によっては高くなったり低くなったりします。計算の基準になるのは、ここまでは高くなる可能性があるという最大使用電圧です。
【重要ルール】
1000Vを超える電路の場合、公称電圧に\(\frac{1.15}{1.1}\)を掛けたものを最大使用電圧とします。
$$\text{最大使用電圧} = \text{公称電圧} \times \frac{1.15}{1.1}$$
なぜ \(\frac{1.15}{1.1}\)なのか?(おすすめの覚え方)
この分数は一見覚えにくいです。しかし次のように分解して考えるとイメージしやすくなります。
- まずは「1.1」で割る:公称電圧を1.1で割ると、キリの良い電圧になります。
- \(6600 \text{V} \div 1.1 = 6000 \text{V}\)
- \(22000 \text{V} \div 1.1 = 20000 \text{V}\)
- そこから「15%」増しにする\(\times 1.15\):基準電圧に対して、送電ロスを見込んだり、負荷が軽くなった時に電圧が上がったりする分を考慮して、「最大でこれくらいまでは上がるだろう」と 15%の余裕(1.15倍) を持たせます。
つまり、式は次のように書き換えられます。
$$\text{最大使用電圧} = \left( \frac{\text{公称電圧}}{1.1} \right) \times 1.15$$
計算するときは「1.1で割ってキリのいい数値にしてから、1.15倍する」と覚えるとスムーズです。
【一覧表】よく出る公称電圧と最大使用電圧の関係
試験によく出る電圧階級を計算してみました。この表の値は、計算しなくてもパッと出るようにしておくと有利です。
| 区分 | 公称電圧[V] | 最大使用電圧[V] |
| 高圧 | 3300 | 3450 |
| 6600 | 6900 | |
| 特別高圧 | 22000 | 23000 |
| 33000 | 34500 | |
| 66000 | 69000 | |
| 154000 | 161000 |
試験電圧の決め方(倍率のルール)
電技解釈 第15条には、電圧の大きさや接地方式に応じて「何倍の電圧をかけるか」が定められています。
試験によく出る部分を抜粋して整理しました。
| 最大使用電圧の区分 | 接地方式(中性点) | 倍率 | 最低電圧 | 備考 |
| 7000V以下 | 指定なし | 1.5倍 | 500V | 低圧屋内配線 高圧ケーブル (3.3kVなど) |
| 7000V超〜60kV以下 | 指定なし | 1.25倍 | 10500V | 6.6kV配電線 22kV受電設備 |
| 60kV超 | 非接地 | 1.25$ 倍 | – | 電験3種の対象外 なので覚えなくてOK |
| 60kV超 | 接地(抵抗接地など) | 1.1倍 | 75kV | 66kV送電線 電験3種の対象外 なので覚えなくてOK |
| 170kV超 | 直接接地 | 0.72倍 | – | 超高圧送電線 電験3種の対象外 なので覚えなくてOK |
覚え方のコツ
- 公称電圧3.3kV、6.6kVなど:一番厳しい1.5倍。
- 一般的な高圧・特高(7kV〜60kV):少し緩めて1.25倍。
よくある勘違い・つまずきポイントの解説
「最低電圧」の適用忘れ
試験電圧には最低電圧があります。
試験電圧の計算結果が「最低電圧」を下回った場合は、最低電圧が試験電圧になります。答えになります。
- 例:最大使用電圧200Vの場合
- 計算:\(200 \times 1.5 = 300 \, [\text{V}]\)
- 判定:最低電圧500Vより小さい。
- 試験電圧:500V($300 \text{V}$ ではない)
直流(DC)で試験する場合
通常は交流(AC)で行いますが、交流は測定対象の浮遊容量などの関係で、大容量の測定装置が必要になります。
そのため実務では直流で試験を行うケースも多いです。直流で試験を行う場合は交流の試験電圧の2倍の電圧で行います。
例えば公称電圧6.6kVなら、試験電圧は10,350Vです。
しかし直流で試験する場合は2倍の20,700Vで試験をする必要があります。
簡単な確認問題
問題
公称電圧6600Vの高圧受電設備の絶縁耐力試験を行う。試験電圧(交流)は何Vか?
正解と解説
答え: 10350V
- 最大使用電圧を求める
公称値6600Vを1.1で割って、更に1.15をかけて最大使用電圧を求めます。$$6600 \div 1.1 = 6000$$$$6000 \times 1.15 = 6900 \, [\text{V}]$$ - 倍率を確認する
最大使用電圧が7000Vなので、倍率は1.5倍となります。$$6900\times1.5 = 10350V$$
過去問解説 法規 平成22年(2010年) 問8
ここでは、実際に計算手順が問われた代表的な過去問を解説します。
問題文
公称電圧 $22000 \text{V}$、三相3線式電線路のケーブル部分の心線と大地との間の絶縁耐力試験を行う場合、試験電圧と連続加圧時間の記述として、正しいものは次のうちどれか。
- (1) 交流 23 000 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
- (2) 直流 23 000 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
- (3) 交流 28 750 [V] の試験電圧を 1 分間加圧する。
- (4) 直流 46 000 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
- (5) 直流 57 500 [V] の試験電圧を 10 分間加圧する。
何を聞かれている問題かの整理
特別高圧(22kV)ケーブルの「絶縁耐力試験電圧」と「試験時間」の知識を問われています。
「最大使用電圧の算出」→「倍率の適用」 が正しくできるかがポイントです。
使う公式・考え方のおさらい
- 最大使用電圧:公称電圧 \(\times \frac{1.15}{1.1}\)
- 倍率:
- 最大使用電圧7000V超~60kV以下:1.25倍
- 試験時間:原則として 10分間
解き方の手順
ステップ1:最大使用電圧を求める
公称電圧22000Vをもとに、最大使用電圧を計算します。
例の覚え方(1.1で割って、1.15を掛ける)を使います。
$$22000 \div 1.1 = 20000$$
$$20000 \times 1.15 = 23000 \, [\text{V}]$$
これが最大使用電圧です。
ステップ2:試験電圧を計算する
最大使用電圧23000Vは、7000Vを超え60kV以下の区分に入ります。
この区分の倍率は1.25倍です。
$$\text{試験電圧} = 23000 \times 1.25$$計算します。
$$23000 \times 1.25 = 23000 \times \frac{5}{4} = \frac{115000}{4} = 28750 \, [\text{V}]$$
よって、交流で試験する場合の電圧は28750Vです。
ステップ3:条件を確認する(直流の場合など)
選択肢には「直流」の場合も含まれている可能性があります。
もし直流で試験を行うなら、交流の2倍の電圧が必要ですので、直流で試験をする場合は$$28750 \times2=57500 \text{V}$$ となります。
ステップ4:試験時間を確認する
試験電圧は甲虫28750V、直流57500Vのどちらかに絞られました。
続いて試験時間を確認します。試験時間は10分間です。
これに合致する選択肢は(5)です。
答えとその確認方法
- 試験電圧:直流 57500V
- 時間:10分間
よって正解は(5)です。












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