機器の保護と危険防止:アーク発生器具・高圧機器の施設制限

「高圧機器は取扱者以外が触れないように…」「アーク器具は可燃物から離して…」──条文を読んでも、どれが省令でどれが解釈なのか、数値は何を指すのか、混乱していませんか。この記事では、電験三種・法規科目で頻出の「高圧・特別高圧の機械器具の施設」と「アーク発生器具の施設制限」について、条文の背景から試験で問われるポイントまで丁寧に解説します。読み終える頃には、穴埋め問題で迷わず正答を選べるようになるはずです。


目次

この記事の結論:試験に出るまとめ

電験三種で問われる重要ポイントを先に整理します。

【暗記必須】高圧・特別高圧の機械器具の施設に関する重要キーワード

項目内容
根拠条文電技省令 第9条
対象高圧または特別高圧の電気機械器具
原則取扱者以外の者が容易に触れるおそれがないように施設
アーク器具アークを生ずるものは、可燃性のものから離すか、耐火性のもので隔離

【暗記必須】アーク発生器具の離隔距離(解釈 第23条)

使用電圧の区分離隔距離
高圧1m
特別高圧(35,000V以下)2m(アークの方向・長さを制限した場合は1m)
特別高圧(35,000V超過)2m

覚えるべき3つのポイント

  • 省令第9条第1項:「取扱者」以外が触れないようにする
  • 省令第9条第2項:アークを生じる器具は「可燃性」から隔離、または「耐火性」で囲む
  • 解釈第23条:離隔距離は「高圧=1m」「特別高圧=2m」が基本

基礎の基礎の解説

そもそもなぜ「施設制限」が必要なのか?

高圧・特別高圧の電気機械器具は、数千Vから数万V以上の電圧を扱います。一般の人がうっかり触れれば、感電による重大事故につながりかねません。また、開閉器や遮断器が動作するとき、「アーク」と呼ばれる電気の火花が発生します。このアークは非常に高温で、近くに木材やプラスチックなどの可燃物があれば、火災の原因になります。

つまり、この規定には2つの大きな目的があります。

  1. 感電防止:一般の人(取扱者以外)が高圧・特別高圧機器に触れないようにする
  2. 火災防止:アーク発生器具を可燃物から遠ざける、または耐火性のもので囲む

電気設備の技術基準を定める省令(以下「電技省令」)では、この2点を第9条で規定しています。さらに、具体的な施設方法は電気設備の技術基準の解釈(以下「電技解釈」)の第21条〜第23条で詳しく定められています。


専門的な解説:なぜそのような規定になっているのか?

省令第9条の構造を理解しよう

電技省令 第9条は、2つの項(第1項と第2項)で構成されています。

第1項:接触防止の規定

高圧又は特別高圧の電気機械器具は、取扱者以外の者が容易に触れるおそれがないように施設しなければならない。ただし、接触による危険のおそれがない場合は、この限りでない。

ポイントは「取扱者」という言葉です。これはその機器を日常的に操作・管理する資格を持った人を指します。
試験ではひっかけとして「技術者」などの選択肢も登場しますので、混同しないように注意しましょう。

第2項:アーク発生器具の規定

高圧又は特別高圧の開閉器、遮断器、避雷器その他これらに類する器具であって、動作時にアークを生ずるものは、火災のおそれがないよう、木製の壁又は天井その他の可燃性の物から離して施設しなければならない。ただし、耐火性の物で両者の間を隔離した場合は、この限りでない。

ここでは「アーク」「可燃性」「耐火性」の3つのキーワードが重要です。

なぜ「アーク」は危険なのか?

開閉器や遮断器は、電気回路の開閉を行う機器です。電流が流れている状態で接点を開くと、その瞬間に空気中に電気が飛び出し、強烈な光と熱を発する「アーク放電」が発生します。

アークの温度は数千℃から1万℃以上にもなります。この高温が木製の壁や天井、プラスチックなどの可燃性の物に接触すれば、当然ながら火災の危険があります。そのため、アーク発生器具は可燃物から十分な距離を確保するか、耐火性のもので囲んで隔離する必要があるのです。

解釈第23条:具体的な離隔距離

省令第9条は「火災のおそれがないように」と抽象的な表現ですが、電技解釈 第23条では具体的な離隔距離を数値で規定しています。

電技解釈 第23条では、アーク発生器具の施設について次の2つの方法を定めています。

方法1:耐火性のもので囲む
アークを生じる部分を耐火性のもので囲むことで、木製の壁や天井その他の可燃性のものから隔離できます。

方法2:離隔距離を確保する
可燃性のものとの間に、下表の距離以上を確保します。

開閉器等の使用電圧の区分離隔距離
高圧1m
特別高圧(35,000V以下)2m(※)
特別高圧(35,000V超過)2m

※動作時に生じるアークの方向及び長さを火災が発生するおそれがないように制限した場合は、1mでよい。

覚え方のコツ

  • 高圧は「1m」
  • 特別高圧は「2m」が基本
  • 特別高圧35,000V以下でアークを制限した場合のみ「1m」に緩和される

「高圧=1、特別高圧=2」と覚えておけば、試験では迷いません。

高圧・特別高圧の機械器具の施設方法(解釈第21条・第22条)

省令第9条第1項の「取扱者以外の者が容易に触れるおそれがないように」を実現する具体的な方法は、解釈第21条(高圧)と第22条(特別高圧)に規定されています。

高圧機器の施設方法(解釈第21条)

以下のいずれかの方法で施設します。

  1. 取扱者以外が出入りできない場所に施設
  2. さく・へいを設け、高さ+充電部までの距離の合計を5m以上とし、危険表示をする
  3. 地表上4.5m以上(市街地外は4m)の高さに施設
  4. D種接地工事を施した金属製の箱に収め、充電部分を露出させない
  5. 充電部分が露出しない機器に簡易接触防護措置を施す

特別高圧機器の施設方法(解釈第22条)

特別高圧は高圧よりも厳しい規定となります。

使用電圧の区分さくの高さ+充電部までの距離(または地表上の高さ)
35,000V以下5m以上
35,000Vを超え160,000V以下6m以上
160,000V超過(6+c)m以上

※ c = {(使用電圧 − 160,000)÷ 10,000}(小数点以下切り上げ)× 0.12


よくある勘違い・つまずきポイントの解説

勘違い①:「技術者」と「取扱者」を混同する

省令第9条第1項で使われているのは「取扱者」であって、「技術者」ではありません。試験問題では「取扱者」と「技術者」が選択肢として並ぶことがよくあります。ここは単純な暗記で対応しましょう。

勘違い②:「難燃性」と「耐火性」を混同する

省令第9条第2項の隔離に使うのは「耐火性」のものです。「難燃性」という選択肢もよく登場しますが、これは誤りです。

  • 耐火性:火に耐える性質(アーク隔離に使用可)
  • 難燃性:燃えにくい性質(耐火性より劣る)

両者は似ていますが、技術基準では明確に区別されています。

勘違い③:離隔距離の数値を混同する

「高圧=1m」「特別高圧=2m」は非常にシンプルですが、試験では「0.5m」や「3m」などの誤った選択肢も登場します。基本の数値をしっかり覚えておきましょう。


簡単な確認問題(2問)

確認問題1

次の文章の空欄に当てはまる語句を答えてください。

高圧又は特別高圧の電気機械器具は、( ア )以外の者が容易に触れるおそれがないように施設しなければならない。

解答取扱者

解説:電技省令 第9条第1項の規定です。「技術者」ではなく「取扱者」が正解です。電気機械器具を日常的に操作・管理する資格を持った人を指す法律用語として覚えておきましょう。


確認問題2

次の文章の空欄に当てはまる語句を答えてください。

高圧用の開閉器であって、動作時にアークを生じるものは、木製の壁又は天井その他の可燃性のものとの離隔距離を( イ )m以上とするか、( ウ )のもので隔離する。

解答:(イ)1、(ウ)耐火性

解説:電技解釈 第23条の規定です。高圧のアーク発生器具と可燃物との離隔距離は1mです。離隔距離が取れない場合は、「耐火性」のもの(「難燃性」ではない)で隔離します。


過去問解説

2022年度(令和4年)下期 法規科目 問3

問題文

次の文章は、「電気設備技術基準」における高圧又は特別高圧の電気機械器具の危険の防止に関する記述である。

a) 高圧又は特別高圧の電気機械器具は、(ア)以外の者が容易に触れるおそれがないように施設しなければならない。ただし、接触による危険のおそれがない場合は、この限りでない。

b) 高圧又は特別高圧の開閉器、遮断器、避雷器その他これらに類する器具であって、動作時に(イ)を生ずるものは、火災のおそれがないよう、木製の壁又は天井その他の(ウ)の物から離して施設しなければならない。ただし、(エ)の物で両者の間を隔離した場合は、この限りでない。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

選択肢(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)取扱者過電圧可燃性難燃性
(2)技術者アーク可燃性耐火性
(3)取扱者過電圧耐火性難燃性
(4)技術者アーク耐火性難燃性
(5)取扱者アーク可燃性耐火性

何を聞かれている問題かの整理

この問題は、電技省令 第9条の条文(第1項と第2項)をそのまま穴埋め形式にしたものです。問われているのは、次の4つのキーワードです。

  • (ア):触れてはいけない対象(取扱者以外の者)
  • (イ):火災の原因となる現象(アーク)
  • (ウ):離すべき対象の性質(可燃性)
  • (エ):隔離に使用するものの性質(耐火性)

使う公式・考え方のおさらい

公式というより、省令の条文を正確に暗記しているかが問われます。

  • 省令第9条第1項:「取扱者以外の者」
  • 省令第9条第2項:「アークを生ずるもの」「可燃性の物から離して」「耐火性の物で隔離」

解き方の手順

ステップ1:(ア)を検討 「触れるおそれがないように」という表現から、感電防止の規定だと分かります。技術基準では「取扱者以外」と規定しています。「技術者」ではないので、(2)と(4)は除外。

ステップ2:(イ)を検討 「動作時に生ずるもの」で「火災のおそれ」があるのは「アーク」です。「過電圧」は異常電圧の問題であり、火災とは直接結びつきません。(1)と(3)は除外。

ステップ3:(ウ)と(エ)を検討 残った(5)を確認します。

  • (ウ)可燃性:離すべき対象は「木製の壁その他の可燃性のもの」で正しい
  • (エ)耐火性:隔離に使うのは「耐火性のもの」で正しい

答えとその確認方法

正解:(5) 取扱者・アーク・可燃性・耐火性

確認方法として、電技省令 第9条を読み返してみてください。すべての空欄が条文どおりに埋まっていることが確認できます。


試験での頻出度・類題で注意するポイント

この問題は非常に高い頻出度です。省令第9条はほぼ毎年のように出題されています。

類題で注意すべきポイントは以下のとおりです。

  • 「取扱者」と「技術者」の引っかけ
  • 「アーク」と「過電圧」の引っかけ
  • 「耐火性」と「難燃性」の引っかけ

これらの組み合わせを変えた問題が繰り返し出題されています。


この問題から学べることや得ておきたい視点

この問題は、省令の条文を「正確に」覚えているかを問うています。法規科目では、このような穴埋め問題が数多く出題されます。

学習のポイントとして、「なぜそのように規定されているのか」を理解しておくと、暗記が楽になります。

  • 取扱者 → 資格を持って管理する人だから触れても安全
  • アーク → 高温だから火災の原因になる
  • 可燃性 → 燃えやすいから離す必要がある
  • 耐火性 → 火に耐えられるから隔離に使える

2025年度(令和7年)上期 法規科目 問4

問題文

次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における、アークを生じる器具の施設に関する記述である。

高圧用又は特別高圧用の開閉器、遮断器又は避雷器その他これらに類する器具(以下「開閉器等」という。)であって、動作時にアークを生じるものは、次のいずれかにより施設すること。

a) 耐火性のものでアークを生じる部分を囲むことにより、木製の壁又は天井その他の(ア)から隔離すること。

b) 木製の壁又は天井その他の(ア)との離隔距離を、下表に規定する値以上とすること。

開閉器等の使用電圧の区分離隔距離
高圧(イ)m
特別高圧(35,000V以下)(ウ)m(動作時に生じるアークの方向及び長さを火災が発生するおそれがないように制限した場合にあっては、(イ)m)
特別高圧(35,000V超過)(ウ)m

上記の記述中の空白箇所(ア)~(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

選択肢(ア)(イ)(ウ)
(1)可燃性のもの0.51
(2)造営物0.51
(3)可燃性のもの12
(4)造営物12
(5)造営物23

何を聞かれている問題かの整理

この問題は、電技解釈 第23条の内容を問うています。先ほどの問3が「省令」の条文だったのに対し、こちらは「解釈」の条文で、具体的な離隔距離の数値が問われています。

  • (ア):隔離すべき対象の性質
  • (イ):高圧の離隔距離
  • (ウ):特別高圧の離隔距離

使う公式・考え方のおさらい

電技解釈 第23条の離隔距離表を覚えておく必要があります。

電圧区分離隔距離
高圧1m
特別高圧35,000V以下2m(制限時は1m)
特別高圧35,000V超過2m

解き方の手順

ステップ1:(ア)を検討 省令第9条でも解釈第23条でも、離隔すべき対象は「木製の壁又は天井その他の可燃性のもの」です。「造営物」という表現は使われていません。(2)、(4)、(5)は除外。

ステップ2:(イ)と(ウ)を検討 残った(1)と(3)を比較します。

  • (1):高圧0.5m、特別高圧1m → 誤り
  • (3):高圧1m、特別高圧2m → 正しい

答えとその確認方法

正解:(3) 可燃性のもの・1・2

電技解釈 第23条の表と照合すれば、すべての数値が一致していることが確認できます。


試験での頻出度・類題で注意するポイント

この問題も頻出度が高いです。特に離隔距離の数値は、計算問題とは異なり「覚えていれば即答」できるため、確実に得点したいところです。

類題では以下の点に注意してください。

  • 「可燃性のもの」と「造営物」の引っかけ
  • 高圧と特別高圧の離隔距離の取り違え
  • 特別高圧35,000V以下でのアーク制限時の緩和条件

この問題から学べることや得ておきたい視点

この問題から学ぶべきは、「省令」と「解釈」の役割分担です。

  • 省令:大原則を規定(「火災のおそれがないように」など)
  • 解釈:具体的な数値や方法を規定(「1m以上」「2m以上」など)

試験では両方から出題されますので、どちらがどの内容を定めているかを意識して学習すると、条文の構造が理解しやすくなります。


全体のまとめ

本記事では、電験三種・法規科目で頻出の「高圧・特別高圧の電気機械器具の危険防止」と「アーク発生器具の施設制限」について解説しました。

最終確認チェックリスト

  • 省令第9条第1項:「取扱者」以外が触れないように施設
  • 省令第9条第2項:「アーク」を生ずる器具は「可燃性」から離すか「耐火性」で隔離
  • 解釈第23条:高圧は1m、特別高圧は2mが基本の離隔距離
  • 特別高圧35,000V以下でアーク制限時のみ1mに緩和

この分野は、覚えるべき内容が限定的で、一度理解すれば確実に得点できる「おいしい」テーマです。穴埋め問題の形式に慣れておき、本番では落ち着いて正答を選んでください。

※法令・技術基準は改正される場合があります。最新の公式情報を確認してください。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

ぜひシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次