電験3種 各科目の解説
B種接地工事の役割(高低圧混触防止)と抵抗値計算
変圧器の1次側(高圧)と2次側(低圧)が「混触」したとき、低圧側に危険な高電圧が侵入します。「なぜ150Vという数値が基準なのか」「なぜ遮断時間で接地抵抗値が変わるのか」——この記事では、B種接地工事の本質的な役割と抵抗値計算の考え方を、公式の丸暗記ではなく理屈から解説します。
この記事の結論:試験に出るまとめ
B種接地工事の接地抵抗値(電技解釈 第17条)
| 変圧器の種類 | 遮断装置の条件 | 接地抵抗値の上限 |
|---|---|---|
| 高圧または35,000V以下の特別高圧と低圧電路を結合 | 遮断装置なし、または2秒超 | (150/Ig) Ω |
| 同上 | 1秒超~2秒以下で遮断 | (300/Ig) Ω |
| 同上 | 1秒以下で遮断 | (600/Ig) Ω |
※ (Ig):高圧側または特別高圧側電路の1線地絡電流(単位:A)
覚えるべき数値のポイント
- 150V:低圧電路の対地電圧の許容上限(これを超えると危険)
- 150・300・600:遮断時間が短いほど、許容される接地抵抗値が大きくなる
- 計算結果が5Ω未満になっても、5Ω未満である必要はない(5Ω以下ならOK)
- 特別高圧と低圧を結合する場合で計算値が10Ωを超えるときは、10Ω以下とする
基礎の基礎の解説:そもそも「混触」とは何が危険なのか
変圧器の構造と混触事故
工場やビルでは、電力会社から供給される6,600V(高圧)を、変圧器で200Vや100V(低圧)に変換して使用しています。
通常、変圧器の1次側(高圧側)と2次側(低圧側)は絶縁されており、電気的につながることはありません。しかし、変圧器内部の絶縁が劣化したり、外部から異物が侵入したりすると、高圧側と低圧側の巻線が接触します。
これが混触事故です。
混触が起きると何が起こるか
混触が発生すると、高圧側の電圧が低圧電路に侵入します。
低圧電路は本来200Vや100Vで使用することを前提に設計されています。そこに数千Vの電圧が加わると、次のような危険が生じます。
- 低圧機器の絶縁破壊による火災
- 低圧機器に触れている人への感電死亡事故
このような事故を防ぐためには、万が一混触が起きた場合でも、低圧側の電圧が上がらないようにする必要があります。
B種接地は混触時に、低圧電路の電圧を抑える目的で施されます。
専門的な解説:なぜ150V制限と接地抵抗値の公式が導かれるのか
B種接地工事の目的
B種接地工事は、変圧器の低圧側の中性点または一端子を大地に接続する工事です。
「大地に接続する」と聞くと、漏電対策のように思えるかもしれませんが、B種接地の主目的は混触時の電圧抑制です。混触が発生したとき、高圧側の地絡電流が低圧側を経由して大地に流れます。このとき、低圧電路の対地電圧は次の式で決まります。
$$V = I_g \times R_B$$
- (V):低圧電路の対地電圧[V]
- (Ig):高圧側の1線地絡電流[A]
- (RB):B種接地抵抗[Ω]
150Vの根拠:人体への影響
B種接地の接地抵抗値は、低圧電路の対地電圧を150V以下に抑えるように設計されます。
この150Vは人体への影響を考慮した値です。一般に、人体が感電したときの危険度は、流れる電流の大きさと通電時間に依存します。対地電圧が150Vだと、感電した際に人体を流れる電流は数十mA程度に抑えられます。決して安全な値ではありませんが、短時間であれば致命的な影響を避けられると考えられています。
接地抵抗値の公式の導出
対地電圧を150V以下に抑えるための条件は、
$$I_g \times R_B \leq 150$$
これを (RB) について解くと、
$$R_B \leq \frac{150}{I_g}$$
これが「遮断装置なしの場合」の接地抵抗値の公式です。
遮断時間と接地抵抗値の関係
ここで、「混触が起きたら、すぐに高圧側を遮断すれば良いのでは?」と思った方は鋭いです。
実際、高圧側に自動遮断装置を設置して混触時に素早く電路を遮断できれば、低圧側に高電圧が加わる時間を短縮できます。
人体への影響は「電圧×時間」で考えるため、遮断時間が短ければ、瞬間的には150Vを超えても許容されるという考え方ができます。これが、遮断時間に応じて接地抵抗値の上限が変わる理由です。
| 遮断時間 | 許容される対地電圧の目安 | 接地抵抗値 |
|---|---|---|
| 2秒超(または遮断装置なし) | 150V | (150/Ig) |
| 1秒超~2秒以下 | 300V | (300/Ig) |
| 1秒以下 | 600V | (600/Ig) |
遮断が速いほど「瞬間的な高電圧」は許容され、その分、接地抵抗値の要求が緩和されるわけです。
回路図でイメージする
下図は、高低圧混触時の電流経路を示したものです。
【正常時】
高圧6,600V ──┬── 変圧器 ──┬── 低圧200V ── 負荷
│ │ │
接地 │ B種接地(RB)
絶縁 │
大地
【混触時】
高圧6,600V ──┬── 変圧器 ──┬── 低圧200V ── 負荷
│ ↓混触↓ │
接地 ────→ B種接地(RB)
↓
←── 地絡電流Ig ──
大地
混触が起きると、高圧側の地絡電流 (Ig) が、B種接地抵抗 (RB) を通って大地に流れます。
このとき、B種接地点と大地の間に\(V = I_g \times R_B\) の電圧が発生し、これが低圧電路の対地電圧となります。
よくある勘違い・つまずきポイントの解説
勘違い①「B種接地は漏電対策のため」
B種接地を「低圧機器の漏電を大地に逃がすためのもの」と誤解している方がいます。
低圧機器の漏電対策はD種接地工事の役割です。B種接地はあくまで混触事故時の保護が目的であり、平常時には大きな電流は流れません(対地静電容量による微小な電流のみ)。
勘違い②「接地抵抗は低いほど良い」
A種・C種・D種接地では「接地抵抗値は小さいほど安全」という認識で概ね正しいですが、B種接地には5Ωという下限緩和があります。
電技解釈では、「接地抵抗値は5Ω未満であることを要しない」と規定されています。これは、共同地線方式など特殊な施設方法を採用する場合の規定ですが、ここまで低かったら許容するというボーダーがあることを覚えておきましょう。
勘違い③「遮断時間が短いと接地抵抗値も小さくなる」
これは逆です。遮断時間が短いほど、許容される接地抵抗値は大きくなります。
- 遮断装置なし → (150/Ig) Ω
- 1秒以下で遮断 → (600/Ig) Ω
遮断が速ければ、短時間で危険が除去されるため、接地抵抗値の要求が緩和されるのです。
簡単な確認問題
問題1
変圧器の高圧側電路の1線地絡電流が4Aで、混触時に1.5秒で高圧電路を自動遮断する装置が設けられている場合、B種接地工事の接地抵抗値の上限は何Ωですか。
解説
遮断時間が1.5秒は「1秒超~2秒以下」に該当するため、接地抵抗値は (300/I_g) で計算します。
$$R_B = \frac{300}{4} = 75 , \Omega$$
答え:75Ω
問題2
1線地絡電流が5A、遮断装置がない場合のB種接地抵抗値の上限と、0.8秒で遮断する装置がある場合の上限をそれぞれ求めてください。
解説
遮断装置なしの場合:
$$R_B = \frac{150}{5} = 30 , \Omega$$
0.8秒で遮断(1秒以下)の場合:
$$R_B = \frac{600}{5} = 120 , \Omega$$
答え:遮断装置なし → 30Ω、0.8秒遮断 → 120Ω
遮断時間が短い方が、許容される接地抵抗値が大きくなることを確認できましたか?
過去問解説
法規科目・令和6年度上期・問13
問題文
変圧器によって高圧電路に結合されている低圧電路に施設された使用電圧100Vの金属製外箱を有する空調機がある。この変圧器のB種接地抵抗値及びその低圧電路に施設された空調機の金属製外箱のD種接地抵抗値に関して、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、次の条件によるものとする。
- (ア) 変圧器の高圧側の電路の1線地絡電流は5Aで、B種接地工事の接地抵抗値は「電気設備技術基準の解釈」で許容されている最高限度の1/3に維持されている。
- (イ) 変圧器の高圧側の電路と低圧側の電路との混触時に低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合に、0.8秒で高圧電路を自動的に遮断する装置が設けられている。
(a) 変圧器の低圧側に施されたB種接地工事の接地抵抗値[Ω]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1) 10 (2) 20 (3) 30 (4) 40 (5) 50
何を聞かれている問題かの整理
この問題は、B種接地工事の接地抵抗値を計算する問題です。
ただし、単純に「許容される最高限度」を求めるのではなく、「最高限度の1/3に維持されている」という条件が付いています。
使う公式・考え方のおさらい
B種接地抵抗値の公式(電技解釈 第17条)
| 遮断時間 | 接地抵抗値の上限 |
|---|---|
| 遮断装置なし(2秒超) | (150/Ig) |
| 1秒超~2秒以下 | (300/Ig) |
| 1秒以下 | (600/Ig) |
解き方の手順
ステップ1:遮断時間の確認
問題文より、遮断時間は0.8秒です。これは「1秒以下」に該当します。
ステップ2:許容される最高限度の計算
1秒以下の場合、接地抵抗値の上限は (600/I_g) です。
$$R_{max} = \frac{600}{5} = 120 , \Omega$$
ステップ3:実際の接地抵抗値の計算
問題文より、「最高限度の1/3に維持されている」とあるため、
$$R_B = \frac{120}{3} = 40 , \Omega$$
答えとその確認方法
答え:(4) 40Ω
試験での頻出度・類題で注意するポイント
B種接地抵抗値の計算問題は法規科目のB問題で頻出です。
特に注意すべきポイントは以下の通りです。
- 遮断時間の判定を正確に行う(1秒ちょうどは「1秒以下」)
- 「最高限度」と「実際の値」を混同しない(本問のように1/3などの条件が付くことがある)
- 対地静電容量による常時電流の問題との複合(同じ回路で(b)問として出題されることが多い)
この問題から学べることや得ておきたい視点
この問題は、B種接地の基本公式を理解しているかを問うと同時に、「実際の現場では基準ギリギリではなく、余裕を持った値で施設する」という実務的な観点も含んでいます。
許容上限120Ωに対して40Ω(1/3)で維持しているのは、より安全サイドに設備を管理するためです。
電験の試験は実務に沿ったものが多く、このような現場感覚を織り込んだ問題が出ることもあります。
過去問解説2
法規科目・令和5年上期・問12(令和6年下期・問12も同型)
問題文
図は三相3線式高圧電路に変圧器で結合された変圧器低圧側電路を示したものである。低圧側電路の一端子にはB種接地工事が施されている。この電路の一相当たりの対地静電容量をCとし接地抵抗を(R_B)とする。
低圧側電路の線間電圧200V、周波数50Hz、対地静電容量Cは0.1μFとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、
- (ア) 変圧器の高圧電路の1線地絡電流は5Aとする。
- (イ) 高圧側電路と低圧側電路との混触時に低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合は1.3秒で自動的に高圧電路を遮断する装置が設けられているものとする。
(a) 変圧器に施された、接地抵抗(R_B)の抵抗値について「電気設備技術基準の解釈」で許容されている上限の抵抗値[Ω]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 20 (2) 30 (3) 40 (4) 60 (5) 100
何を聞かれている問題かの整理
この問題は(a)でB種接地抵抗値の上限を求め、(b)で対地静電容量を考慮した常時電流を計算するという複合問題です。
ここでは(a)のB種接地抵抗値について解説します。
使う公式・考え方のおさらい
遮断時間に応じた接地抵抗値の公式を使用します。
解き方の手順
ステップ1:遮断時間の判定
遮断時間1.3秒は「1秒超~2秒以下」に該当します。
ステップ2:接地抵抗値の計算
$$R_B = \frac{300}{I_g} = \frac{300}{5} = 60 , \Omega$$
答えとその確認方法
答え:(4) 60Ω
試験での頻出度・類題で注意するポイント
この問題パターンは2023年上期、2024年下期と繰り返し出題されています。
(b)問では、B種接地抵抗と対地静電容量による分流計算が問われますが、(a)問のB種接地抵抗値自体は、遮断時間を正しく判定できれば単純な割り算です。
遮断時間の境界値に注意してください。
- 1秒ちょうどは「1秒以下」(600/Ig)
- 2秒ちょうどは「1秒超2秒以下」(300/Ig)
この問題から学べることや得ておきたい視点
試験では、B種接地抵抗値の計算と、対地静電容量を含む回路計算が組み合わされることが多いです。
まずは本記事で解説した基本公式を確実に使えるようにすることが第一歩です。その上で、交流回路の複素インピーダンス計算(理論科目の知識)を組み合わせれば、(b)問にも対応できます。
※本記事の内容は「電気設備技術基準の解釈」に基づいていますが、法令は改正されることがあります。試験受験時は最新の公式情報をご確認ください。












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