電験3種 各科目の解説
PCB含有機器とポリ塩化ビフェニル廃棄物の規制
「古い工場にある変圧器、実は猛毒が入っているかもしれない」
電気主任技術者の実務において、絶対に避けて通れないのがPCB(ポリ塩化ビフェニル)の問題です。
電験3種の法規科目では、このPCBに関する規制に関する出題があります。
特に重要なのは、電気設備技術基準における「施設禁止」の原則と、PCB特措法における「処分期間」「保管基準」のルールです。
この分野は法律が絡むため難しく感じられがちですが、ポイントを整理すれば確実に得点源にできる単元です。
この記事では、PCBがなぜ危険視されているのかという基礎から、試験で問われる高濃度・低濃度の区別、そして過去問(平成21年度)の解説を通して実践的な知識を習得します。
PCB規制の全体像と結論
まず、この記事の結論からお伝えします。
- PCB(ポリ塩化ビフェニル)は人体に有害であり、現在は製造・輸入・使用が原則禁止されています。
- 電気設備技術基準により、PCB含有機器は電路への施設(設置して使用すること)が禁止されています。
(一部例外を除く) - 電気主任技術者は、これらの機器を「高濃度」か「低濃度」か判別し、法律で定められた期限までに必ず処分するよう管理する必要があります。
そもそもPCBとは?なぜ規制されるのか
1. PCB(ポリ塩化ビフェニル)の正体
PCBは、Poly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称です。
かつては「夢の油」と呼ばれ、以下のような非常に優れた性質を持っていました。
- 電気的絶縁性が高い
- 燃えにくい
- 化学的に安定している
そのため昭和40年代頃まで、変圧器(トランス)やコンデンサの絶縁油として広く使われていました。
電気を通しにくく、燃えにくい、更に成分が変化しにくいという性質は、電気製品の絶縁に最適だったからです。
2. なぜ禁止になったのか(カネミ油症事件)
しかし、PCBには致命的な欠点がありました。それは「毒性が強く、自然界で分解されにくく、体内に蓄積する」ことです。
1968年に発生した「カネミ油症事件」により、PCBが混入した食用油を摂取した人々に深刻な健康被害が出たことで、
その危険性が明るみに出ました。これを受けて、1972年以降、新たな製造は禁止されました。
PCB特措法
また健康被害が広く知られることになり、すでに使われているPCBを適切に処分することを定めた法律が施行されました。
それが「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」。通称PCB特措法です。
これはPCBをいつまでに、誰が、どうやって処分するかを定めた法律です。
【最重要】高濃度PCBと低濃度PCBの違い
PCBの処分時期や方法は高濃度か低濃度かによって異なります。
電験3種の実務問題でも重要になるのが、この「高濃度」と「低濃度」の区別です。
| 区分 | 定義(イメージ) | 濃度の基準 | 該当する機器の例 |
| 高濃度PCB | PCBそのものを絶縁油として使用したもの | PCB濃度が 5,000 mg/kg を超えるもの | 昭和28年〜47年に製造された変圧器・コンデンサ等 |
| 低濃度PCB | 意図せず微量のPCBが混入してしまったもの | PCB濃度が 0.5 mg/kg 超、5,000 mg/kg 以下 | 数万件の変圧器などに混入の可能性あり |
| 非含有 | PCBが含まれていないもの | PCB濃度が 0.5 mg/kg 以下 | 現在製造されている機器 |
試験問題で「微量のPCBが混入した絶縁油を使用する変圧器」という表現が出たら、それは「低濃度PCB」として扱われます。
これらは通常の産業廃棄物として捨てることはできず、「特別管理産業廃棄物」として厳重に扱う必要があります。
電気主任技術者が守るべき「3つの義務」
PCB含有機器を管理する上で、主任技術者は以下の3つの義務を果たさなくてはいけません。
1. 電路への施設禁止(電気設備技術基準 第59条)
基本的に、PCBを含有する絶縁油を使用する機械器具は、電路に施設してはいけません。
ただし、やむを得ない事情があり、かつ、漏洩防止措置などの厳重な管理が行われている場合に限り、例外的に使用継続が認められるケースがありますが、原則は「使用禁止・即交換」です。
2. 保管と表示の義務
処分するまでの間、PCB廃棄物は厳重に保管しなければなりません。
保管場所には、以下の事項を表示した掲示板(60cm × 40cm以上)を設置する必要があります。
- 特別管理産業廃棄物であること
- 保管の管理者の氏名・連絡先
- 種類と数量
3. 期間内の処分の義務
これが最も厳しいルールです。
「いつか処分すればいい」ではなく、「定められた期間内に必ず処分委託契約を結ばなければならない」と法律で決まっています。
高濃度PCBの処分期限は実は終了しています。(2023年3月31日まで)
低濃度PCB廃棄物については「2027年(令和9年)3月31日」までとなっています(記事執筆時点)。
よくある勘違い・つまずきポイント
Q. 油を入れ替えれば普通のゴミとして捨てられますか?
A. いいえ、絶対にダメです。
PCBは油を入れ替えても、変圧器内部の紙や木に染み込んでいるため、完全に除去できません。
油を入替・洗浄・希釈して濃度を下げようとする行為は、不適正処理として厳しく罰せられます。
Q. 銘板に「PCBなし」と書いてあれば安心ですか?
A. 製造年によっては注意が必要です。
「PCB不使用」と書かれていても、製造過程で微量のPCBが混入してしまった事例(低濃度PCB)が多数見つかっています。特に1990年代以前の機器については、メーカーの見解を確認するか、分析調査を行う必要があります。
簡単な確認問題
理解度をチェックしてみましょう。
問題1
PCB廃棄物の保管場所に掲示しなければならない事項として、法令上誤っているものはどれか。
- (1) 特別管理産業廃棄物の種類
- (2) 保管の管理者の氏名または名称
- (3) 処分を委託する予定の業者の選定理由
- (4) 管理者の連絡先
解答と仮説
問題1の正解:(3)
掲示板に必要なのは「保管している廃棄物の種類」「数量」「管理者の氏名・連絡先」など、現在の管理状況を示すものです。「業者を選んだ理由」などは掲示事項に含まれません。
問題2
低濃度PCB廃棄物とは、廃棄物に含まれるPCBの濃度が何mg/kgを超えるものを指すか。
- (1) 0.1 mg/kg
- (2) 0.5 mg/kg
- (3) 50 mg/kg
- (4) 5,000 mg/kg
解答と解説
問題2の正解:(2)
基準値は暗記必須です。
- 0.5 mg/kg 以下:PCBを含まない(非含有)
- 0.5 mg/kg 超 〜 5,000 mg/kg 以下:低濃度PCB
過去問解説 法規・平成20年度・問8
では、実際の試験問題を解いてみましょう。
問題文
「PCB電気工作物の取扱い(施設禁止と届出)」
次の文章は,「電気設備技術基準」及び「電気関係報告規則」に基づくポリ塩化ビフェニル(以下「 PCB 」という。)を含有する絶縁油を使用する電気機械器具(以下「 PCB 電気工作物」という。)の取扱いに関する記述である。
- PCB 電気工作物を新しく電路に施設することは (ア) されている。
- PCB 電気工作物に関しては,次の報告が義務付けられている。① PCB 電気工作物であることが判明した場合の報告② 上記①の報告内容が変更になった場合の報告③ PCB 電気工作物を (イ) した場合の報告
- 上記2の報告の対象となる PCB 電気工作物には, (ウ) がある。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
| (ア) | (イ) | (ウ) | |
| (1) | 禁 止 | 廃 止 | CV ケーブル |
| (2) | 制 約 | 廃 止 | 電力用コンデンサ |
| (3) | 制 約 | 転 用 | 電力用コンデンサ |
| (4) | 制 約 | 転 用 | CV ケーブル |
| (5) | 禁 止 | 廃 止 | 電力用コンデンサ |
何を聞かれている問題か
- PCB機器の設置は「禁止」か「制約(条件付きOK)」か?
- 報告が必要なのは「廃止」した時か「転用(使い回し)」した時か?
- PCBが使われている代表的な機器は「CVケーブル」か「電力用コンデンサ」か?
解き方の手順
ステップ1:(ア)の語句を特定する
電気設備技術基準 第59条により、PCB含有機器は電路への施設が「禁止」されています。「制約」のような緩い表現ではなく、絶対ダメ、という強い規制です。
→ 選択肢は (1) か (5) に絞られます。
ステップ2:(イ)の報告タイミングを特定する
電気関係報告規則 第4条の2において、報告が必要なのは「設置(判明含む)」「変更」そして「廃止」した時です。
PCB機器は「転用(他の場所で再利用)」すること自体が禁止されているため、転用の報告という規定はありません。
→ この時点で (1) か (5) です。
ステップ3:(ウ)の機器を特定する
PCBは「絶縁油」として使われていました。
- 電力用コンデンサ: 内部に絶縁油が封入されており、PCB含有機器の代表格です。
- CVケーブル: Cross-linked Polyethylene Vinyl sheath Cable(架橋ポリエチレンビニルシースケーブル)の略で、絶縁体はポリエチレン(固体)です。絶縁油は使わないため、PCB機器には該当しません。→ 正解は「電力用コンデンサ」です。
答えとその確認方法
正解:(5)
解説:
- (ア)禁止: PCBは毒性が強いため、新たな使用は全面的に禁止されています。
- (イ)廃止: 使用をやめて廃棄物にする(廃止する)際に、行政への報告義務が発生します。これにより国は「どこにどれだけPCB廃棄物があるか」を追跡管理します。
- (ウ)電力用コンデンサ: 変圧器と並んで、PCBが最も多く使われた機器の一つです。
試験での頻出度・類題で注意するポイント
- 頻出度: 星4つ(★★★★☆)
- 注意点: 「禁止」か「制約」かのような言葉の選び方は、法規科目特有のセンスが問われます。環境汚染物質に関しては「原則禁止」という強い言葉が選ばれる傾向にあります。また、CVケーブルなどの「ひっかけ選択肢」にも注意しましょう。
まとめ:あなたの現場の機器は大丈夫?
この記事のポイントを復習しましょう。
- PCB機器は電路への施設が禁止されている。
- 使用をやめて廃止する時は、必ず報告する。
- 電力用コンデンサや変圧器は、PCBが含まれている可能性が高い要注意機器である。
きちんとした企業の工場であれば、PCBの処分はすでに実施済み、少なくともほぼ完了しているところが多いです。
それでも古い建屋の照明の安定器などから低濃度PCBの含まれた部品が見つかることがあります。
自社や入構先の企業や工場ではどのように処分が進められたか確認してみるのも、知識の定着を図るのに役立つと思います。












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