モータ用ケーブルの選定方法を分かりやすく解説します【電圧降下と許容電流】

プラントにはモータで動く設備が多数あります。
そのモータを動かすために電力を送っているケーブルには、様々なサイズや種類がありますが、電圧降下や許容電流を考慮して適切なケーブルを選定しなくてはいけません。

この記事では電圧降下や許容電流がなにか分からない!といった方向けに、分かりやすくケーブルの選定方法について解説します。

ケーブル選定で考えること

ケーブルを選定する時に検討することは、主に以下の3つです。

  • 電圧降下
  • 許容電流
  • ケーブルの種類や配線のし易さ

この3つについてそれぞれ解説していきます。

電圧降下について

まず電圧降下についてです。
ここで言う電圧降下とは、電源元の電圧とモータにかかる電圧の差分です。

例えば電源の電圧が200Vのとき、モータにかかる電圧も200V、とはなりません。
必ず電源の電圧よりモータにかかる電圧は低くなります。

なぜならケーブルの抵抗やインピーダンスは0では無いからです。
電流が流れると、ケーブルの抵抗やインピーダンスによって電圧が低くなります。

分かりやすく直流で考えてみます。

100mのケーブルを使って、電源からモータへ配線をしたケースを考えます。
このケーブル100mでの抵抗を1Ω、電源電圧は直流100V、モータには3Aが流れるとします。

するとオームの法則から、ケーブルにかかる電圧は$$電圧=抵抗×電流=1×3=3V$$となります。
この3Vが電圧降下です。
よって100Vをかけたのにモータには97Vの電圧しか、かかりません。

この電圧降下が大きすぎると、モータが回らないといったことが起こります。

実際のプラントでは、交流モータが多く使用されているので、交流のときの電圧降下についても考えてみます。
交流ではケーブルのインピーダンスから電圧降下を計算します。

電圧降下を求める計算式は簡略式と基本式があります。
ケーブルが短かったり、電流が小さい(モータ容量が小さい)等の場合は簡略式を使えます。

ただし、モータの容量が大きい場合や、ケーブルが長い場合などは基本式を使います。
実際私が設計する時は、使い分けるのが面倒なのでいつも基本式を使っています。
基本式は簡略式に比べると複雑ですが、エクセルなどに入力しておき、電圧や電流、インピーダンスなどを入力するだけで電圧降下が求められるようにしておけば手間はかかりません。

電圧降下計算式(簡略式)

配線方式電圧降下を求める式対象電圧降下
単相2線式$$電圧降下=\frac{35.6\times{L}\times{I}}{1000\times{A}}$$線間
三相3線式$$電圧降下=\frac{30.8\times{L}\times{I}}{1000\times{A}}$$線間

$$I:モータに流れる電流[A]、L:ケーブルの長さ[m]、A:ケーブルの断面積[m^2]$$

電圧降下計算式(基本式)

$$電圧降下=K_1\times{L}\times{Z}\times{I}$$

$$K_1:配線方式による係数、L:ケーブルの長さ[km]、Z:ケーブル1km当たりのインピーダンス[Ω/km]、I:モータに流れる電流[A]$$

インピーダンスはケーブルの仕様書やカタログなどに記載されているので、その値を使います。
仕様書やカタログはケーブルメーカのホームページからダウンロードできます。

また配線方式による係数はモータの配線方式によって変わり、以下の表の様になります。
プラントで使われるモータは三相3線式で配線するものが多いです。

配線方式$k_1$
単相2線式2
三相3線式$\sqrt{3}$

こうして電圧降下を求めた後は、電圧降下率を求めます。
これは電源電圧に対して、モータにかかる電圧は何%下がっているかです。

この電圧降下率は内線規程で、何%まで許容できるかが定められています。
それが以下の表です。
ケーブルの長さや電源の種類によってそれぞれ決まっています。

許容電圧降下率

ケーブルの長さ電源を電気使用場所内変圧器から供給する場合の許容電圧降下率電源を電気事業者から低圧で受ける場合の許容電圧降下率
60m以下3%以下2%以下
120m以下5%以下4%以下
200m以下6%以下5%以下
200m超過7%以下6%以下

これを満たす様にケーブルを選定します。

普通プラントですと、構内に変圧器が設置されていて、そこから電源をモータへ送ります。
そのため表の真ん中の烈の許容電圧降下率で考えればOKです。
ただし、きちんと電源がどこからきているかは確認をしましょう。

また表の右の烈の許容電圧降下率ですが、これは「電力会社から低圧の電圧を直接受けている時の許容電圧降下率」です。
これがどういうケースか例を上げれば、一般家庭がこれです。
電柱の上にある変圧器で、高圧を低圧に下げて家に送っています。

許容電流について

また電圧降下の他に、ケーブルの許容電流も考慮してケーブルを選定する必要があります。

この許容電流とは、ケーブルに何Aまでの電流を流せるか?です。
当然実際流れる電流よりも、許容電流が上でなくてはいけません。

なぜ許容電流を考える必要があるかと言うと、ケーブルに電流が流れると、ケーブルの抵抗によって発熱するからです。
許容電流が低いケーブルを選定してしまうと、この熱でケーブルが溶けて火災などの事故に繋がります。

許容電流の値はケーブルの仕様書やカタログに書いてあります。
ただしここに記載しているのは逓減率を考慮していない値です。

通常ケーブルは電線管の中に入れたり、ケーブルラックの上に載せて配線します。
ケーブルラックの上にはケーブル一本だけ乗せることはまず無く、複数本のケーブルが載ります。
それぞれケーブルは発熱するので、熱がこもります。
そのため一本だけ配線したときよりも、放熱がしにくくなるため、許容電流は低下します。

このどれくらい低下するかが逓減率です。

低減率について

低減率はケーブルの並べ方や間隔などでいくつにしなくてはならないか決まっており、例えば下の図の様になります。

この例の他にも3段であったり、もっと列数が多かったりと様々なケースがあります。
その場合の低減率は日本電線工業会のJCS 0168という規格で定められていますし、ネット検索をすれば参考資料が多くでてくるかと思います。

しかし実際の現場では、設備が新設されたり不使用になったりで、ラックの上に多数のケーブルが載っていることが少なくありません。
その場合の低減率をどうするかは難しいのですが、より厳しい条件(小さい低減率を使う)で検討した方が、安全です。

ケーブルの種類や配線のし易さ

以上で解説した電圧降下と許容電流を考慮することが、ケーブル選定の基本です。

実際検討をしてみると分かりますが、太いケーブルほど許容電流は大きく、抵抗(インピーダンス)も小さいです。
そのためとにかく太いケーブルを使えば問題は無いと考えることもできそうですが、実際はそうはいきません。

まず太いケーブルは高額です。必要以上に太いケーブルを使えば材料費が高くなります。
経済性の観点から適切なケーブルを選ぶ必要があります。

また実際に配線をするときに、太いケーブルを扱うのはとても大変です。
太いケーブルは重く、曲げにくいです。
そのため実際に配線をするときに太すぎるケーブルを選んでしまうと、工期も長くなります、労務費も高くなります。

適切なケーブルを選ぶことで、適切な価格で工事を行うことができます。

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